アパレル業界は、石油業界に次いで世界で2番目に環境汚染をしている地球環境にとても大きな影響を与えている産業の一つです。また、原料となるコットンなどの生産者や縫製工場の児童労働、低賃金での長時間労働や、劣悪な労働環境による健康被害など人権問題も深刻な状況です。アパレル業界の市場規模の拡大とともに、悪影響も増しています。コンシャス・コンシューマーの増加など消費者意識の高まりからアパレル業界にサステナビリティが求められています。
大量生産・大量消費のビジネスモデル
世界全人口78億人に対しての約10倍、800億のアイテムを毎年生産。20年間で衣服の生産量は400%増化している。たった4つの季節(SS / AW)に52回ものコレクションを発表。SPA (製造小売業)のビジネスモデルの主流化によって、各週という短いスパンで新しい商品を店頭に並び変えている。(※2021年度 Population Pyramid.net )
日本における衣類廃棄量は、年間約100万トン。枚数に換算すると、なんと33億着。日本全人口の30倍の服が毎年廃棄。衣類の再利用率は13%と低く、87%が焼却・埋め立て処分されている。(※独立行政法人中小企業基盤整備機構調べ)
また、日本の最終処分場の残余年数はたったの16.4年。16年後には日本のゴミ処理場が満杯になる。(※環境省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許認可に関する状況について」 )衣類の72%がポリエステルなどの合成繊維はプラスチック繊維であるため、非生分解性であり、分解するのに最大200年かかる(※sustainyourstyle.org)
水の大量消費
アパレル産業では1.5兆リットルもの水が毎年使用されている。
1トンの布を染色するには200トンの真水(綺麗な水)が必要なのに対して、世界の7億5000万人は飲料水を利用できない現状です。
インドの全人口の毎日の水の必要量の85%は、国で綿花を栽培するために使用される。インドでは1億人がきれいな飲料水を利用できていません。(※sustainyourstyle.org )
マイクロファーバーによる海洋汚染
合成繊維(ポリエステル、ナイロンなど)を洗うたびに、約1,900本のマイクロファイバーが水中に放出される
マイクロファイバーを食べた水産物を食する人間もマイクロファイバーを摂取している
世界中の85%の海岸線はマイクロファイバーで覆われている(※sustainyourstyle.org)
原料・生産過程での土壌の汚染や砂漠化
・生産された生地1キロあたり23kgの温室効果ガスが発生
・1枚の衣服を50回ではなく5回のみの着用すると、CO2排出量は400%増加
・衣服を作るのに毎年7000万本の木が伐採されている
・モンゴルの土地の90%は、カシミヤの生産の為のヤギ繁殖のために砂漠化に瀕している
・世界の93%の土壌の砂漠化や劣化の原因は、
家畜の過剰な繁殖 35%
森林伐採 30%
農業 28%
・・このままだと、20〜50年後には30%の土壌が砂漠化、劣化し食産業へ大きな悪影響を与える
食糧不足へつながる(※)
化学染料などによる水質汚染と薬品による健康被害
世界の水質汚染の原因の約20%を占めるのが、アパレル産業。毎年20万トンの染料で汚染された水が排出される。開発途上国の廃水の90%は正しく処理されずに河川に排出。
1kgの繊維を生産するには1kgの化学薬品が必要。世界中で生産されるすべての化学物質の23%が繊維産業に使用される(※sustainyourstyle.org)
日本国内でも染料工場で従業員5人膀胱がんを発症した。洋服などを染める染料や顔料のもとになる化学物質で、発がん性があるとされる化学物質「オルト―トルイジン」が原因。この化学染料を使用している工場は、経済産業省へ届出が出されている全国で約40カ所存在する。(※日本経済新聞 )
大量生産による安価な労働条件と過酷な労働環境
・世界にはおよそ4,000万人の縫製労働者がいます。
・カンボジアの工場の94%が残業規制に違反しており、工場は残業を拒否したとして40人の労働者を解雇。
・バングラディシュのある縫製工場ビルでは、死者1127人、負傷者2500人以上が犠牲となるビル崩壊事件が発生。ビルの異変に気がついた労働者はビル管理者に事前に報告していたにも関わらず、なんの対処も行わなかった。(※)
・事件のあったバングラディシュのある縫製工場では、主に若い女性が劣悪な環境で1日14時間労働を強いられていた。
バンガロールの女性の縫製労働者の約14%がセクハラまたはレイプされていました。60%が脅迫または暴力の脅迫を受けたと報告し、40〜50%が屈辱と言葉による虐待を経験したと報告しました。
南アジアでは5歳から17歳までの約1,670万人の子供が働いており、そのうち約1,030万人が15歳未満です。(※)