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サステナビリティ通信 【 AI の進化とその活用は、企業のサステナビリティ経営をどう変えるか? 】

豪雨災害の爪痕が残るなか、季節はかわり、ようやく秋らしい日々を楽しめるようになりました。
今回は、自然環境のお話から少し離れ、AI/人工知能についてお話したいと思います。

急加速する AI の開発の現場では、開発企業のトップ自らが強い危機感を露わにするほど、AI の威力は高まり、同時に犯罪や不正を助長するリスクも急浮上しています。もはや人工知能は開発者の意図どおりには機能せず、ユーザーの目の届かないところで自律的に思考し、行動するレベルまで発達しているようです。新しい技術には常に相応のリスクが伴うものの、それを制御して使いこなすのがわたしたち人間でした。

それはサステナビリティに取り組む経営者も同様で、多くの皆様はこの先、AI を使いこなし、AI が常にデータを収集・分析・報告し、人間に意思決定を促すような未来に適応して行くでしょう。実際にすでに多くの企業が ESG の取り組みに AI を利用し始めていますし、統合報告書を読解し、優位性や不満足な点を洗い出すコンサルの仕事の多くも AI が代行しています。

こうした中、米国では一部の州で AI を駆動させる「データセンター(DC)」が急増し、大量の電力や水を使い始めたため、社会問題化しています。というのも、電力会社は新たな発電所を作る投資コストをそこで暮らす地域住民にも分担させたため、一般家庭の電力料金が上がり、住民はDCのこれ以上の増加に反対運動を展開し、それが 11 月の中間選挙の争点にもなっているほどです。それもそのはず、世界のデータセンターの電力消費は昨年の約 485TWh から 2030 年に約 950TWh へ倍増する見通しです。これは日本の年間消費電力量にも匹敵する規模なのです。

●AI によって何が大きく変わるか

それではサステナビリティの取り組みに AI を活用すると、いったいどんなことが起こるのでしょうか?

  • サプライチェーンに連なる企業への監視が強まり、多方面から情報収集した AI が人権などのリスクを抱えているサプライヤーを洗い出し、たとえ価格や納期で優位にあっても、サプライチェーンから除外するようになる。
  • CO2 の削減施策や気候変動の適応策に於いて、何が最も効果的かを他の事例などから学び AI が推奨する。
  • データの収集、分析、まとめ、ESG レポートなどの作成が飛躍的に早く、安く、正確にできる。
  • 省資源・資源循環では、排出される資源ごみの種類、量、場所、頻度などが可視化され、再資源化に要するコストや時間が大幅に下がる。
  • 生物多様性の維持や回復に向け、TNFD に取り組む企業で、衛星画像等からその効果を可視化しやすくなる。
  • 資金調達や採用に於いて、サステナビリティがどのような付加価値を生み、経営に貢献するかを可視化しやすくなる。

こうして考えれば、中堅中小企業の経営者は、リスクには十分注意しつつ、AI を駆使すれば、人財や予算をかけずにサステナビリティを推進できるようになるのではないでしょうか。

●積極的な AI の活用で大きく前進する領域

このように様々な取り組みを可視化し、「価値化する」過程において、従来の作業や経費が大幅に削減できるのが AI 導入効果として期待されます。特に「サプライチェーン管理」は、最も期待する効果が大きいでしょう。日本は島国ながら、世界中に調達網が広げており、その実態を把握し難いことが事業上のアキレス腱でした。AI が導入されれば、取引先が多岐にわたっても、それらがニュースや行政・NGO からの情報としてネット空間に上がっていないかを常時監視できます。「人権」「環境」「労働」「贈収賄」「水」「森林破壊」などのキーワードで潜在リスクを早期発見し、改善勧告や取引継続の是非を早期に判断出来るようになります。

ESG 報告書の作成プロセスも大きく変わります。企業では関連各部門から情報を集め、サステナビリティの担当部署が整理し、経営企画部門が中心となって統合報告書などにまとめていますが、AI を使えば、さまざまな評価項目の中で、何が競合他社に比べて優っているか、どうアピールすれば差別化しやすいかまでを提案してくれます。

女性管理職比率やガバナンス情報、サプライヤー情報などを統合して、一定の期間内に何がどう改善し、何が悪化したかを客観的に分析し、対外訴求できるようにもなるでしょう。

●「予測型サステナビリティ」

AI を駆使すると「このまま生産計画を続ければ 2050 年の排出削減目標を 15%下回る可能性が72%ある」というような予測まで可能になります。さらに、「デジタル・ツイン」と呼ばれるバーチャル空間を用いて、今ある工場を再現し、電力を再エネ化すると 2040 までに〇〇億円コストを下げられるなどとシミュレーションすることが出来ます。つまり、あるべき姿を描いてから、そこに到達するアプローチを、様々な実例から最も確度の高い提案として提示することが、従来の何十分の一の時間とコストで出来るのです。まさに、自社にスーパーコンピューターを導入し、経営企画部員を倍増したような成果が得られると考えられます。

●AI の Pros&Cons:AI 導入によるサステナビリティ経営へ利点とリスク

言うまでもなく、顕著な利点は、コストが下がる、人間では見つけられないリスクまで発見できる、ESG と経営戦略を統合できる(経営指標と ESG を同じ構造内でシミュレーション)など、中堅・中小企業においてもそのメリットは変わりません。

一方で知っておくべきリスクも幾つかあります。まず AI 自身が環境負荷を生むこと。省エネ AI の開発も進むでしょうが、意味のない使い方(例えば AI が勝手に要約や翻訳する機能)も増えており、電力に加えて貴重な水が冷却用に使われています。またサステナビリティ経営で特に危険なのは、「AI が言ったから正しい」との誤解を生むことです。

AI の判断根拠は公開データだけなので、それが誤っていたり、偏っていたら答えは信用できません。 サステナビリティには、単純な数値化できないものもあり、安易に AI に依存しては正しい判断はできません。経営者は、AI をあくまで「優秀な分析・警告システムと位置づける」ことが重要です。

AI による雇用への影響も注意すべき課題です。AI 導入によって、事務、経理、調査、翻訳、コンサルティング、デザインまで代行され始めています。労働人口に占めるこれらの従業員は多く、容易に職種の転換は出来ません。社員の大きな犠牲の上に人件費を削減できても、それはサステナビリティ経営とは言いにくいでしょう。欧米でも余剰人員の再教育による、「Just Transition(=公正な職種の移行)」という施策が重要視されています。

●企業経営者はどのように AI を活用すればよいのか

ここで肝に銘じておくべきことは幾つかあります。まず、AI の回答は「事実」なにか「推定」なにかを明確に分けて扱う。さらにデータの出所を見に行き、論理の整合性をチェックする。そして提示された施策の採否は人間が最終的に判断する(つまり信用はするが全面的な信頼、権限移譲はしない)。こうして AIを積極活用すれば、日本企業にとっては大きなチャンスを生み出すと思います。人智を AI で支援し、補完することで、日本語圏という今までの「情報過疎地帯」から一歩外へ乗り出し、「経営改善」と「サステナビリティ」を同時並行でに進められるようになります。

サステナビリティ経営は、「年1回の報告書」のためにやるのではなく、「リアルタイムの経営に統合する」ものです。
AI になってそれが実現することを望みますし、AI を駆使しつつ、自律的に企業を経営するリーダーに大いに期待したいと思います。

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