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サステナビリティ通信 【 サステナビリティの対極にある考え方 】

6月の欧州は、たいへん心地良い気候で、観光にはもってこいの季節でした。厳しい暑さは7月後半の2週間程度で、朝晩は涼しかったので、南欧を除く欧州の一般家庭にはエアコンが必要ありません。しかし、最近は各国で気温が上昇し、救命救急センターでは熱中症患者への対応が追い付かないそうです。夏のバカンスシーズンを前に、2億人を超える市民が35度以上の猛暑に晒され、40℃に達する熱波によって多くの犠牲者が出ているとのニュースには心が痛みます。この警鐘を聞き流せば、取り返しのつかないことになるのは明らかです。
今回は、「サステナビリティ思考と、その対極にある考え方」について考えてみたいと思います。
● サステナビリティ思考
日本は古来、自然に抗うのではなく、うまく適応して暮らすための知恵をたくさん生んできた国です。それは自然との共生のみならず、社会生活においても言えます。私たちは先祖代々、環境や社会を維持・保全 (サステイン)する能力を受け継いできたのです。それは一体どんなものでしょうか?
一言でいえば、周囲の状況変化に気付き、関心を持ち、それに応じて自ら行動する力であるといえます。農繁期には自分の収穫を終えたあとも、ご近所の農家を手伝ったり、また急病人が出ればその家庭の子供を預かったりと言うことが、ごく当たり前に行われてきました。それは「お互い様」という助け合いの精神や、「お陰様」という感謝のこころによって地域で支え合う力を生んだのです。引っ越しの際には近所に御挨拶し、ご近所からも差し入れや生活情報を共有しにいったり、人間同士が接点を持つことで社会基盤が強く保たれてきました。また衣服も子供服にリメイクしたり、最後にはおむつや雑巾に転用して資源を有効活用し、食べ残しや、薪の灰、肥やしに至るまで有機肥料に活用するなど、自然資源を大切に使う営みも徹底していました。
ケニアの環境保護活動家、マータイ氏は日本の「勿体ない」文化を世界に広め、国際的な流行語にしました。「勿体ない」は仏教用語で、本来持つ価値が失われるのを惜しみ、維持するよう働きかける考えを表すそうですが、日本人が自然の恵みを慈しみ大切にしてきた証です。
● 持続可能性の対極にある考えや行動
高度経済成長と共に生活様式が大きく変わり、核家族化と共にご近所への不干渉主義が拡がっています。マンションでは同じフロアの人でも名前を知らず、接点を持とうとすれば「プライバシーの侵害」と避けられる方も多いようです。どこでどう暮らそうと各人の勝手ということでしょうが、現代社会において、どの程度、人と人の接点を持てば平穏に暮らしやすいのか、正解はどこにもなく、自ら状況判断するしかありません。
こうした流れは、社会という広い意味での生活基盤を維持するのに不可欠な、「公益心」が少しずつ失われることにも繋がるのではないでしょうか。社会の持続可能性を脅かす考えや行動は、私たちの職場や家庭でも日常的に見られます。
いくつか例を挙げれば:
- 課題先送り・・・面倒なことに関わるリスクを恐れ、自らは課題解決に汗を流さず、周囲や後任に委ねてしまう
- その場しのぎ・・・当面の不都合を解決すべく対症療法に終始し、問題の根本原因を追究しない
- ご都合主義・・・客観的な指摘や批判には傾聴せず、自分に都合の良い評価だけを取り入れる
- 見て見ぬふり、当事者意識の欠如・・・いつか誰かが解決してくれることを期待し、自らは関与しない
- 事なかれ主義・・・課題に向き合うことで、揉めたり意見調整で苦労することを恐れ、やり過ごす
- 責任転嫁・・・前任者や上司の不作為を嘆くだけで、他人に責任を押し付ける
こうした考えや行動は、ある意味で組織の中でうまく立ち回る術ともいえるかもしれません。実際にこうした考えでトラブルを避け、出世した人も多いと思います。しかしこれでは問題は積み増し続け、社会は少しずつ暮らしにくくなります。
領土問題のように、解決を急ぐと余計に拗れることもありますので、解決先送りが全てダメとは言えませんが、将来に禍根を残したり、取り返しのつかない状態で後進に委ねるのは、やはり無責任であり、賢明ではないでしょう。こうした生き方は、少なくともサステナビリティとは相容れないと思います。
これは私たちの健康に関しても当てはまります。定期的に歯医者で健診すれば、多くの場合、虫歯は防げるでしょうし、治療も軽くて済みますが、いつしか足が遠のき、辛い治療を体験したことは皆さんの多くが経験済みだと思います。虫歯は決して自然治癒することはなく、早ければ早いほど治療は楽なのですが、ついつい先送りしがちです。
私がブラジルに駐在員として着任したとき、笑顔の素敵な人が多いのが第一印象でした。「スマイル・ブラジル」という健康保険で歯列矯正の費用の大半がカバーされ、信じられない低コストできれいな歯並びが得られます。これは成長期や老後の疾病の多くを予防し、社会保障費の高騰を抑えるサステナブルで優れた健康保障戦略といえるでしょう。
● 社会課題への関心と関わり方
日本人の暮らしは豊かになりましたが、国民が幸福になり、不安や格差が減ったかと言えばそうではないと思います。82億人が同じ地球上に暮らし、そのうち8億人が飢えに苦しみ、10億人が肥満に悩む世界というのは、健全な社会とは程遠いでしょう。こうした世界規模の課題というのはスケールが大きすぎて、自分一人が行動したことで何も変わらない、また自社で課題解決に貢献しようにも、砂漠の1滴にすらならないと考えがちです。
しかし、その諦観、無力感こそが、実はわたしたち人類の「最大の敵」ではないでしょうか。雨粒は一滴に過ぎませんが、それが群を成し、降り続けるから大雨になり、山を削り、大河を作ります。私も環境保護団体で6年間勤務し、多くの専門家や有識者から学ぶ中で、「その手があったか!」と驚く場面や、その積み重ねによって成し遂げられた成果に感銘を受ける体験が何十回もありました。
「小さなことが小さくはない、大きなことも大きくはない、それは心ひとつだ」という格言がありますが、大きな社会のうねりに必要なのは、私たち一人ひとりのほんの小さな意思と行動力です。
是非皆様と御一緒に、与えられた一隅を照らし、課題解決を目指して汗を流して参りたいと思います。
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