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サステナビリティ通信 【 嘘とサステナビリティ 】

いつも変化を続けるサステナビリティに関心をお寄せ頂き、有難うございます。
今回は、サステナビリティと「嘘」の関係について少々考えてみたいと思います。
● サステナビリティと嘘の関係
そもそも「嘘」とは何でしょうか? 簡潔に定義すれば、「何らかの意図を持って、事実ではないことを知りながら伝える情報」と言えるでしょう。私たちの暮らしの中には様々な種類や性質の「嘘」があり、それは生活の知恵と言えるものかもしれません。
もちろん詐欺などの犯罪で使われる嘘は、「相手を窮地に陥れる悪意のある偽情報」であり、信じると私たちが不利益を被る大変危険な情報です。一方で相手に対する配慮から生じる「誤情報」は、分類的には「噓」に属しても、「嘘も方便」というように、目的を達成するためには仕方ないと、容認されやすい比較的小さな偽情報です。
ビジネス交渉の場で、日本人がよくやる行動のひとつに、その場ではっきりNOと言わず、「持ち帰って検討します」と回答を先送りすることがあります。これはどちらかと言えば、相手の立場やメンツに配慮した小さな嘘と言えるでしょう。
英語には「white lie=白い嘘」という言葉があり、相手の気持ちを傷つけず、良好な人間関係を維持するための「腹黒さのない嘘」として使われています。こうして考えると「嘘」は洋の東西を問わず、人間関係の必要悪かもしれません。
私たちは何にでも白黒(=正否)を求めるべきではなく、むしろ幅広く解釈できる「グレーゾーン」を一部残しておく方が良い場合があります。実際にその曖昧さが関係を良好に維持することもあるでしょう。誘いを断る際に「行けたら行くね」といえば、行きたくない気持ちを和らげて伝えることができます。それでは、私たちの社会や事業の持続可能性を追い求めるうえで、どういった嘘なら容認されるのでしょうか?
● 嘘と政治とサステナビリティ
政治家の発言を市民があまり信用しないのは、世界共通のようです。独裁政権の広報は偏った情報だらけと言わざるを得ませんし、トランプ大統領のように、根拠の無い数字や憶測を無責任に言い放てば、政府に対する信頼は地に堕ちます。しかし、だからといって政治家のつく嘘が全て悪い嘘かと言えば、そうではないこともまた真実です。
3.11の東北大震災に続く、福島第1原発の事故では、非常に多くの不正確な情報が大手メディアを通じて流されました。私は当時、海外駐在中だったので、欧米のメディアからも情報収集をしましたが、福島原発の炉心がメルトダウンしているかどうかという、最も重要なリスク情報については、日本と海外メディアで大きな違いがありました。
政治家であれば、ある程度情報操作をしても「人心」を落ち着かせ、秩序を維持しないと、国民がパニックになれば更に被害が拡がると懸念するのは当然です。新たな人災を生まないために、避難区域を時間とともに拡げていったのは正しい判断だったでしょう。被爆リスクの高い地域の住民から非難命令を出し、順次低い地域へと退避の流れをつくるには、そうした情報操作は有効です。それが政治であり、安全配慮や適正な誘導のための「方便」だと思います。
国の安全保障面では、さらに大きな情報操作が行われていることでしょう。日本の非核三原則では核兵器を「持たず」、「作らず」、「持ち込ませず」を掲げていますが、前の二つは日本の意志で決められるものの、「持ち込む」主体は同盟国・アメリカなので、米国の核戦略に左右されるでしょうし、既に米国の公文書が公開され、1960年前後には沖縄に核弾頭を搭載したミサイルが配備されていた事実も露呈しています。
● ホルムズ海峡の封鎖と高市政権の備蓄情報
2月28日、米軍のイラン侵攻により、イランは国際海域であるホルムズ海峡封鎖と言う暴挙に出ました。日本はオイルショック以来、経済安全保障の観点から、原油の調達先を拡大し、湾岸原油への依存度を68%程度まで下げました。しかしその後、経済合理性を優先し、現在は95%近く依存しています。
ホルムズ海峡と言うチョークポイント(絞めれば窒息する急所)を封鎖されれば、備蓄が240日分あっても心配になるのは当然です。8カ月暮らせるだけの貯蓄があっても、失職すれば支出を抑え、節約するのは当たり前です。戦争のような非常時には、様々な嘘が乱れ飛び、私たちは慎重にその真否を見定め、取るべき行動を決めなくてはなりません。
パニックや利ザヤ稼ぎ(安く買って高く売り、その差額で利益を得る)の転売を防ごうと、高市政権は、原油備蓄が潤沢であることを訴えてきましたが、現場では石油精製品の幾つかが逼迫し、とくにナフサは需給バランスが崩れ、市場は大混乱しています。「令和の米騒動」で生じた不信感が消えぬうちに、政府への不信感が、ますます深刻になっています。
- 原油は未だ十分ある(が、このまま使い続ければ、いずれは足りなくなる)
- ナフサも全体量は十分ある(が、用途や地域によっては偏在し、供給が追い付かない)
政府は大戦末期の大本営発表のような愚策を弄せず、もっと国民を信頼し、国民がとるべき行動を示唆する必要があります。この国のサステナビリティには、何を優先すべきか、市場原理のどこにリスクが潜んでいるか、政府は様々な事態を想定してリスク回避策を施すべきでしょう。日本国民は信頼し合えば結束は固く、秩序は維持できますから、優先順位に沿って供給を続け、創意工夫して原油の消費量を抑える道は見つけられるはずです。
オーストラリアのビクトリア州では、原油消費を抑える方法の一つとして、公共交通機関を無料化しました。自家用車の通勤を抑え、電車やバスの利用を奨励した結果、ガソリン消費は目に見えて下がり、住民も通勤費を大幅に節約した人が多数出たそうです。州政府と州民が危機意識を共有し、協力して化石燃料消費を減らした事例といえるでしょう。
● 誤情報・偽情報が跋扈する社会においても、サステナビリティ経営を貫く
方便から悪質な嘘まで、様々な偽情報が飛び交う中、サステナビリティ経営にとって重要なことは何でしょうか?
それはどんな利害関係者が絡んでいるかを整理し、自ら現場に足を運び、当事者達から直接事実関係を聞くことだと思います。メディアの情報に頼らざるを得ない場合でも、様々な情報源から客観的データを集め、複層的に判断することも大切でしょう。当座の対処のための情報、中期的な対応に資する情報、長期的な投資に必要な情報など、時間軸からも得るべき情報は異なります。長期にわたって事業に影響する場合は、「経済合理性」よりも、「未来合理性」を中心に据えて判断してゆかなければなりません。
社員の「夢」であっても、社員の努力を結集すれば実現できることはあります。最初は信じられなかったことでも、皆の貢献によって叶う夢の事例は枚挙に暇がありません。今すぐに実現出来なくとも、希望に満ちた未来を「嘘」だと一蹴せず、どうすればそのような未来に一歩近づけるのか、皆様も是非耳を傾け、手を差し伸べて頂きたいと思います。
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