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サステナビリティ通信 【 適応力とサステナビリティ 】

新緑が目にまぶしい季節となりました。
いつもサステナビリティに関心をお持ち頂き、有難うございます。今回は、サステナビリティに関する多様な考え方、そして誤解についても考えてみたいと思います。
●サステナビリティ ≠ いまある姿を堅持すること
「持続可能性」という言葉は1987年以降、英語のサステナビリティを翻訳した、比較的新しい言葉です。まだ解釈や定義も固まりきってはいないように感じます。例えば、同じ商品を100年以上変わらず売り続ける老舗も、100年の社史の中で何度も取扱商品やビジネスモデルが変わった企業も、共に「持続可能」という範疇にはいると見做されます。
サステナビリティ経営においては、常に先を考えて自ら変化し、社会課題の解決に寄与する能力や影響力を持つことが重要だと言い続けてきましたが、持続可能性に限って言えば、承継した伝統を堅持するのが良いのか、多様な新しい意見を取り込んで、より良い姿を模索し続けるのが良いのか、答えを出すのは容易ではありません。
スポーツ界を例にとれば、日本発祥の柔道も剣道も、その高い精神性や、修行の規律が人々を魅了し、多くの競技者を育んできました。柔道は広く世界に普及し、オリンピック種目にもなった半面、運用ルールは大きく変容し続けています。柔道着の色に始まり、判定には「有効」や「効果」など、きめ技を欠いたまま勝敗を左右するルールや、「指導」といった試合姿勢を問うルールまで採択された経緯があります。また、勝つことを重視するあまり、技が決まりかけても「受け身」をとらず、不自然に身体を捻って倒れるなど、危険極まりない行為も見られます。世界の柔道の競技人口は2000万人を突破したと言われますが、フランスの競技人口56万人に対し日本は16万人程度と大きく後退した状況とのこと。
これに対して剣道は、国際化よりも日本のルールを堅持した為、世界の競技人口は200万人に留まる中、その7割近くを日本人が占めています。共に日本の伝統的武道の代表格でありますが、それぞれが岐路においてどう判断したのか。スポーツの本質と国際化のトレードオフの関係について、研究する価値がありそうです。
●消費税率の改定とサステナビリティ
1990年初頭のバブル崩壊から続いてきた経費削減の限界点に達し、安倍政権時代からの公約だった「デフレからの脱却」は、インフレと賃金上昇の相乗効果を生みつつあるかのように見えました。しかし食料品を中心とする諸物価の高騰により、私たちの実質賃金は伸びず、更に米国のイラン攻撃でホルムズ海峡封鎖が長引けば、原料調達の行き詰まりで工業製品、食料品、運賃などの更なる値上げが確実視されています。
急激な物価上昇による消費税の増収は、「審議なき増税」とも言われ、低所得者や生活困窮者にとっては生殺与奪にもつながる危険なコスト増となります。せめて食料品に対しては税率を下げたり一定期間ゼロにするというのは生活者保護の観点からは理に適っています。
先の衆議院選挙において、野党が食料品の消費税免除を争点にするや否や、これが勝敗を決すると警戒した高市政権は即座に便乗し、圧勝後はその実行策を巡って論争が起きていますが、私はそれを聞いて唖然としました。国会が消費税ゼロを議決しても、店先のレジスター改修に1年もの時間を要すると言うのです。デノミなど硬貨・紙幣の刷新や、課税方法の変更ではなく、商品カテゴリーの部分的な税率変更対応になぜ1年もかかるのか? すでにイギリスやドイツ、スペインでは同様の税率変更に1週間程度で即応できたことを考えれば、不思議としか思えません。
●欧州や米国で可能なことが、なぜ日本では出来ないのか?
欧米と日本の違いを要約すると、日本ではお店のレジスターを機械単体として納入し、運用しているのに対し、欧米ではレジスターをネットワークに繋げ、決済システムとして稼働しているとのこと。日本では十何万もの店舗で機械を改修するのに対し、欧米では各店舗の中央で食料品の税率を変更すれば、それが全国一斉に反映できるということです。これはレジが全国の精算支援サービスの中で使われる端末機器との位置づけであることを示します。
消費税率はどの国でも常に見直され、日本でも3%から5%へ、更に8%や10%へと何度も変更され、軽減税率も実施されてきました。こうした変更にG7諸国では即応でき、日本では出来ないというのは忸怩たる思いです。
貿易にまつわる関税では、「関税はかけるが、税率はゼロで実質的には免税と同じ」で運用してきたものの、消費税は0%は想定していなかったという報道もあります。また0ではなく、1%にすれば半年で対応可能などという筋の通らない話が出ています。0でなければ良いなら0.1%にすべきと思いますが、議論はどんどん脱線してゆきます。
●本質を見失った議論のすり替えや迷走
「消費税を0%にしても、食料品の値上げがあれば、生活者の負担は軽くならない」という議員までいます。消費税を据え置けば、値上げによるダブルパンチで消費者はますます困窮するわけで、値上げで救済効果が薄れるのと税率の議論は別次元の論点です。また便乗値上げを企む企業や流通業者に対しては厳しい監視と罰則をもって臨むべきことは、「令和7年の米騒動」からも明らかです。更には食料品の消費税をゼロにすると、外食産業は2%有利な状況から一転して8%不利に転ずるので不公平との声もあります。しかし、先ず救うべき対象は明らかで、食材すら買えない人々を放置してはおくことは許されません。こうした論点の迷走に付き合っていては、時宜に叶った政策の実行は望めません。
COVID19が蔓延する中、マスクの買い占めや高値転売に見られたように、日本人が営々と築いてきた国民一人一人の公益心や社会全体の信頼性が、大きく揺らいでいるように思います。社会システムを高品質に保ち、誰もが安心して暮らせることが社会の持続可能性の要件ですが、他人の不幸を省みない「○○第一主義」や、「国際ルールを無視した軍事行動」など、大国の横暴が日本にも暗い影を落としています。
●守るべきもの・変えるべきもの
持続可能な社会への道は、何を堅持し、何に対して柔軟に対応すべきかを考え、衆議を尽くし、選択し、行動することで見えてきます。私たちが地球上で暮し続けるのに必要なルールを、私たち一般市民一人ひとりが護る必要があります。政治は混迷を続けていても、学術界や宗教界は多様性を認め、寛容性をもって共存を訴えています。太平洋戦争後、日本は幸いにして戦火を避け、難民にならずに暮らすことが出来ましたが、私たちは何を守って、何に適応してきたのか、どんな社会を目指し、どうやってそのギャップを埋めるべきか?
私たちは歩みつつも、周囲に目を配り、並走する人々と協議する必要があると思います。サステナビリティは人類が最も得意とする能力です。しかしその能力も鍛え、磨かなければ衰えてしまいます。日本社会には少しずつ錆が目立ってきました。しっかりとメンテナンスし、綻びは改修してゆかなければなりません。
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