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サステナビリティ通信 【 New Harmの時代 】

いつもお読みいただき有難うございます。

Japan noharm Associationでは、将来にわたって人類が地球上で暮らし続けるために、課題を直視し、それをどう解決すべきかを考えてきました。その解決策は、強者が弱者を犠牲にすることなく、また企業が持続的な成長を実現しながら実行できるものでなければなりません。

そんなきれいごとが通用するのか、利益を追求する企業活動は、公益性とは相容れないのでは、という懸念はよく耳にします。しかしだからこそ、その課題に真剣に向き合い、二律背反するかに見えるゴールを一石二鳥で実現できる策を見出すことが必要であり、そんな解を生み出すことが、健やかな成長に資すると信じて、日々の業務に取り組んでいるのです。

残念なことに、世界では社会や環境に新たな損害をもたらす技術が次々に開発されています。そういうリスクを孕んだ技術とはどのように共存すべきなのでしょうか?

痛みを伴わない”new harm

私の幼少期には、子供同士で言い争いが起きたとき、大人は直ぐには介入せず、じっと見守り、掴み合いの喧嘩になったところで仲裁にはいり、怪我をする一歩手前で止めることが多かったと記憶しています。立場が異なれば、それぞれに正義があるから争うわけですが、素手で闘う限りダメージは致命傷にはなり難く、むしろ殴る側の痛みや、叩かれる方の屈辱感を経験することで、許される限界を自ずと認識し、自己抑制を学ぶ機会になっていました。

武道においても、自制心を保ち、受け身や防御に多くの時間を割き、戦わざるを得ない状況に陥っても、相手を制圧し、相手の戦闘意欲が萎えれば終わりというのが指導の要諦です。

しかし現代の戦場においては、若者たちが相手の痛みを想像できぬまま多くの敵を殺戮する技術を習得しています。その典型がドローンや無人機による自爆攻撃です。それらはウクライナ戦争を契機に急速に普及し、今回の米国によるイラン侵攻でも大量の無人自爆兵器が投入され、遠隔操作によって多くの犠牲者を生み出しています。

PlayStationなどのゲーム機器は「Joy Stick」とも呼ばれるコントローラーを用います。指先でゲームを楽しむのに最適な構造と機能を有していますが、バーチャルな世界でゲームを楽しんできた世代は、その操作に卓抜しており、モニター画面の中の敵をゲーム感覚で殲滅出来てしまいます。これは今後、どういう意味を持つのでしょうか?

かつて戦場では、敵兵に遭遇し相手を銃撃すれば、相当のショックと罪悪感に苛まれ、多くの帰還兵が精神的ダメージを追いました。太平洋戦争で戦った日本兵の記録には、実に67万人もの日本兵が「戦争神経症(現在のPTSDに相当)」という精神・神経疾患を発症したのです。これは実戦に駆り出された兵士の約8%に当たる程の規模です。  

敵兵とはいえ、他人を殺傷すればどれほど自分自身も傷つけるかを物語る重要なデータと言えます。こうした精神疾患はベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争でも継続して見られ、アメリカ社会で蔓延する薬物乱用や自死の背景には、こうした非人道的な行為を強要されたことが契機として明らかにされています。

そうした苦悩から兵士を護ると言えば聞こえは良いものの、モニター画面という半ばバーチャルな世界に閉じこもって戦うことは、「殺人へのブレーキ」を壊しているとも言えます。テレビゲームと同じ感性で、実在の人間を傷つけ、殺すことがここ数年で急速に普及していることには戦慄を覚えます。

現代の「new harm」には、相手の痛みが分からないという共通点を持つSNSによる誹謗中傷があります。相手に面と向かって対峙し、批判や論戦に発展すれば、それ相応に相手から反撃され、自らも傷つくことが分かっているので、ある程度は抑止力が働いてきました。しかしSNSが普及し、匿名性を維持したまま、事実の検証もなく無責任な中傷やコメントが溢れるようになり、真実が跡形もなく消し去られるところまで事態は深刻になっています。政治家や評論家など、ある程度、批判に慣れている人であっても、その圧倒的な量や、容赦ない表現に心を病み、自ら命を絶つ例まで出てしまっています。

物理的な損壊を伴わなくとも、言葉の暴力で他者の心を深く傷つける行為は、コミュニケーション技術の濫用による新たな社会悪として早急な対策が必要です。プラットフォーム事業者は、もはや「情報のやりとりの場を提供しているだけ」という言い逃れをせず、社会に於ける事業の影響について責任を自覚し、自ら対策を講じる必要があります。

かつて「信仰の自由」をはき違えたことで、多くの犯罪被害者が生まれたように、「言論の自由」についても、無責任で無制限な悪意ある匿名発信を放置すれば、社会は深く病んでしまいます。新しい技術は制約するべきではありませんが、使ってみて不都合な事実が明らかになれば、衆議を尽くして「あるべき姿」に近づけていかなければ、言論は暴走し、大きな惨禍を生みかねません。

技術の二面性と人類の英知

かつて花王の社長を務めた丸太芳郎氏は、様々な技術開発の中で「将来に禍根を残すような技術は決して採用してはならない」と釘を刺しました。こうした経営トップの慧眼によって私たちの社会はharmを排除し、リスクを減らしながら暮らしてきました。私たちが祖先から受け継いできたDNAは、様々な失敗や痛みから学んだ記録を刻み込んできた智慧の塊です。何かおかしい、どうも不安だと私たちが本能的に感じるとき、こうした過去からの膨大な経験知が警鐘を鳴らしているのです。

急激な進化を遂げる生成AIのもたらす利点と欠点は、今まで経験したことが無いほどのスケールと推察されます。私たちの仕事や暮らしにも大きな影響を及ぼすことは明白でしょう。しかしそのAIが拠り所とする情報は、“インターネット上にある公開情報”に限定されており、人類が有する膨大な知識量(公開知以外の、暗黙知や経験知、言語化されていない感覚知など)に比べれば僅か数%にも満たないといわれています。

つまりAIはインターネット上で“より多く見られる見解”を選び出し、それを“言語表現として正しくなるように整え”示す技術です。驚くべき情報量と作業効率を兼ね備えてはいますが、AIの特性を正しく理解して使わなければ誤った方向に導かれてしまうことにもなりかねません。

現在のように、法の支配や国際秩序をないがしろにし、自分の利益ばかりを追い求める指導者が跋扈する社会では、ビジネスを行う経営者は注意深く技術を選択しなければなりません。そのためには試験的に使い、メリットとデメリットを体験し、他の多くの利用者と協力して注意事項を蓄積しながら普及させてゆくことが重要です。

スウェーデンの科学者で、実業家でもあったアルフレッド・ノーベルは、自ら開発したダイナマイトが兵器に利用され、多くの悲劇を世界中で生んでしまった結果、「死の商人」と罵られました。遺言により、人類に有為な研究者を顕彰する「ノーベル賞」を創設しましたが、原子力も広島・長崎で膨大な被爆者を生み、またチェルノブイリや福島原発でも甚大な被害をもたらし、世界で議論は尽きません。私たちは、既に地球上の全ての生命を奪う技術をもっており、そのリスクを、僅か9人の政治家に委ねています。彼らは、私たちの尊い命と地球の未来を託せる人物でしょうか?

サステナビリティは、社会の発展に向け、先端技術を多面的に理解し、バランスよく取り入れる生き方でもあります。日本が未来志向で健全な社会と環境を守るリーダーの一人として、世界の信頼を勝ち得るには、法と対話による平和を希求しつづけねばなりません。私たちもそれぞれのビジネスにおいてそれを意識し、努力していきましょう。

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