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サステナビリティ通信 【 問われる企業の非財務情報 】

寒波や豪雪でご苦労されている皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

「気候変動」は夏の気温上昇のみならず、地球の水循環全体に大きく影響を及ぼすことが知られており、これからは豪雨災害・豪雪災害への備えが益々必要になってくると懸念しています。自然はもともと変化し続けるものですが、そこに人為的効果が加わると、その変化に想定外の激しさをもたらすことがありますので、くれぐれも注意が必要です。

こうした人為的効果を少しでも減らそうと、日本でも法律の力を借りて加速しようとする動きを2つご紹介します。


最近では、規模の大小を問わず、「温室効果ガス」の排出削減が求められるようになってきました。大企業のサプライチェーンに連なっている中堅・中小企業も含めた、包括的な排出量の報告と削減努力が求められるためです。

さまざまな温室効果ガスはCO2に換算し、CO2eという単位で測られますが、排出量が多い企業群から順に、排出削減を加速させる動きが出始めています。昨年12月19日に、経済産業省から発表された『排出量取引制度における上下価格水準(案)』というものにその筋道が描かれています。既に欧州では、産業別・企業別にキャップ(帽子を転じて上限という意味で使われている)と呼ばれる年間排出総量の上限値が決められており、排出量がこれを超えてしまう企業は、超過する量を「排出枠」として有償で買い求めなければ、排出できません。日本では未だにこうした企業の排出上限値が明確に設定されておらず、試験的に作られた排出権取引市場では、自主的に売買を試みる一握りの企業が取引をする程度でした。

ところが、この『排出量取引における上下価格の水準(案)』によれば、2026年度から2030年までは排出権取引の「第2フェーズ」と位置づけ、年間排出量がCO2換算で10万トン以上の企業には、市場への参加を義務付けるとしたのです。これにより、事務所以外に製造現場を持つ企業や、運送・運輸を生業とする多くの企業は大きな変化に巻き込まれることになります。いずれ過去数年間にわたる排出量の推移から、今後の「削減目標」が導き出され、その目標を達成するように排出量を減らすか、再エネに切り替えるか、超過分の排出枠を購入しなくてはならないとなれば、企業は今まで以上に排出削減に真剣に取り組まないと、収益が圧迫され続けます。CO2の排出削減に於いては、日本は米国を除くG7諸国の中で「周回遅れ」と非難されてきましたが、、ここにきて漸くこうした規制に乗り出すことになったのです。

排出権取引では、自然エネルギーへの転換を実現して排出枠を下回り、余った排出枠を売りに出せる企業と、排出枠を超えてしまい、超過分を買い求める企業の需給バランスに応じて、1トン当たりのCO2排出権の価格が変動するのが自由経済の原則です。しかしながら今回の経産省案では、大幅な取引価格高騰が企業収益を圧迫しないように配慮する一方で、既に再エネ化した企業努力を正当に評価すべきなど、様々な思惑が交錯した結果、当面は国が取引価格の上限価格・下限価格を示すことになったのです。

その下限が¥1,700/CO2e(CO2換算で1トン当たり1,700円)、上限が¥4,300/CO2eです。自社の排出量を既に把握している経営者の皆さんなら、それが経営にどう影響するか、すぐにピンとくるかと思います。

対象となる年間排出量10万トン以上の企業の場合、仮に排出枠が15万トンで実際の排出量が17万トンあるとすれば、2万トン分の排出枠を買い求める必要があるので、1年で最低でも3,400万円、場合によっては8,600万円が排出枠購入コストとして発生する、それを減らしたいなら再エネに転換しなくてはならないという訳です。毎年、排出枠を購入するのが良いのか、いっそ太陽光発電パネルを工場に敷設したほうが良いのか、その経営判断を迫るのがこの法案の目的です。

いずれコストとして炭素を意識しなければならなくなるという時代から、明確な数字で経営判断を求められるます。年間10万トンという枠は今後さらに引き下げられてゆくでしょうし、上限・下限価格ともに、少しずつ市場経済に委ねるようになるでしょうから、いま排出量が10万トン以下だからといって安心はしていられません。また大企業はサプライチェーン全体での排出量を調査し開示することが求められますので、サプライヤーにも削減義務を負うように求める企業が多く、ボヤボヤしていると、ライバル企業に取引を横取りされてしまう可能性も出て来ます。カーボンは減らさなければ新たな経営コストになります。是非その前に対策をしっかりとお願いします。


次にご紹介するのが上場企業の情報開示に変化をもたらす法制度の話です。株式市場では、企業が広範かつ多くの投資家から資金を調達するため、厳しい上場基準をクリアした企業しか上場できません。また上場後も、毎年『有価証券報告書』という財務報告書の発行が義務付けられています。しかも株主総会開催後、3か月以内に正確な内容で発行しなくてはならず、総務部やIR部門の主な業務の一つとなっています。

金融庁は、企業の規模に順じて、有価証券報告書の中に、サステナビリティの取り組みを追加記載することをこのほど法制化しました。来年3月には時価総額3兆円以上の企業、次年度は1兆円企業と、まだ数年間は猶予があるとお考えの経営者も多いと思いますが、その影響は中堅・中小企業にも及ぶ可能性が出てきます。

プライム市場に上場する約1600社のなかで、時価総額1兆円以上の企業は176社で、全体の1割超になります。これらの大企業のサプライチェーンに連なって取引を行っている企業は約14万社と推定され、重複を除いても8万社あります。2次取引を行っている企業まで含めれば17万~30万社が何らかの影響を受けると推定されるのです。

税務統計によると日本には稼働している法人数が約400万社存在し、その殆どが中小企業ですが、その1割ほどは来年から取引先の関連取引先として、サステナビリティの要件につき、質問が来れば回答が求められます。もちろん回答は自由ですが、回答できなければ、回答した企業よりは不利な印象を招くことは容易に想像がつきます。

今まで、自社の事業と環境の関係や、人権や資源循環に関することは、やったほうが良い程度に思われていた経営者の方々が多いと思いますが、時代の波は着実にサステナビリティ経営の実践を求めています。大企業には豊富な資金や、専門スタッフがいるが、中堅・中小企業にはそんな余裕はないと嘆く経営者は多数おられますが、これを企業文化の見直しの機会と捉え、経営者としての矜持を質す機会と捉えることは、持続可能な発展に向けた第1歩と言えるでしょう。


人間の事業活動は、自然界のエコシステムとは違い、どうしても環境や社会に負荷をかけてしまいます。また自然界のサイクルに少なからず影響を与え、またそうして変化してゆく自然界からも大きな影響を受けることになります。この相互作用をサステナビリティの観点からは“ダブル・マテリアリティ”(=双方が重要な影響を与え合うこと)と呼ばれていますが、その影響度は、これからますます大きくなってゆくと推測されます。

企業は事業規模の大小や従業員数にかかわらず、経営者の考え方や行動で大きく変容してゆきます。20年後、30年後の飛躍や成長も、いまこの時間からの小さな一歩で実現に近づけます。

「小さいことが小さくない、大きなことが大きくない、それは心ひとつだ」との名言通り、企業経営にとって、本当に大切なものは何なのか、を考えることが企業経営の基盤を作ります。 

それらを育みながら、社会から入用な企業となることを目指して、毎日を心豊かに過ごして参りましょう。

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