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SDGs・サステナビリティ通信 【 2025年の試練 】

秋が足早に過ぎ去り、街では人々が師走の喧騒の中でひしめき合っています。
「季節」という大自然のもつ周期に、祖先たちは一年間という時間の枠を決め、それを細分化して表示できる時計が開発されたことで、私たちの生活は世界で82億人が共有する尺度で正確に刻まれるようになりました。今では電波時計で時刻合わせをする必要もなく、また光エネルギーを電力に変えて電池交換も不要になりました。
しかし、これほど文明が進化しても、誰も永遠には生きられず、みな老いていくという点では共通しており、その意味では世の中は「ほぼ平等である」と言えるのではないかと思います。そうであれば、他人と比較し、枝葉末節な点で悩む必要はありません。ビジネスクラスも、エコノミークラスも、「安全に、同じ時刻に到着できる」という旅の本質に目を向ければ、10数時間過ごすスペースや食事の僅かな差は大した意味を持たないと思います。
「足るを知り、自ら福を生み出せるように生きる」のが、サステナビリティの本質であり、良い面といえるでしょう。
● 2025年のサステナビリティ
今年も様々な変化の中で私たちは生きてきました。この一年間を振り返り、サステナビリティの取り組みがどのように変遷してきたかを少し考えてみたいと思います。
サステナビリティは今年、大きな試練に直面し、普及速度が鈍り、また一部は後退してしまいました。その一因は言わずと知れたアメリカにおける政権交代です。サステナビリティが、より広い視野を持ち、より先の未来を見据えて行動を促すのに対し、トランプ政権はアメリカ人の今の為だけに、なりふり構わず行動する政治姿勢を露わにしました。ダイバーシティを推進する企業には白人差別だと因縁をつけ、OC2削減に取り組む企業には、エネルギー転換が株主の利益に背くと訴訟をけししかけ、脅しました。
国連の長年の努力で、金融機関がこぞってサステナビリティに取り組むことで、持続可能性、とりわけ気候変動対策は大きく前進しましたが、共和党の執拗ないやがらせで、NZBA(ゼロ・カーボン社会を目指す金融機関の有志連合)は解散に追い込まれてしまいました。それではこの先、サステナビリティの取り組みは衰退してゆくのでしょうか?
アメリカの大手コンサル企業が5000社を超えるアメリカの大手企業の経営トップにアンケート調査を試みたところ、実は85%のCEO達がトランプ政権の圧力の下でもサステナビリティの取り組みを推し進めていることが明らかになりました。今までと異なるのは、それを前面に訴求しなくなったことだけと見られます。
それは企業内の多様性の容認、資源の循環や再利用、カーボンの排出削減、生態系への負荷削減など、どれをとっても企業の信頼性向上やリスク回避に寄与し、また社員のエンゲージメント強化にも有効だということが、既に多くの事例から明らかになっていたからです。そして、その動きはアジアや中南米でも着実に浸透しています。しかし、一方で、サステナビリティの取り組みが、少しでも停滞すれば、鬼の首をとったかのように騒ぎ立てるメディアも存在します。
欧州は2035年以降、ガソリンやディーゼルなどの化石燃料エンジン車の新車販売を禁止すると発表していましたが、それを緩めざるを得なくなったという人がいます。それは現地メディアをきちんと読まないことによる誤解です。欧州が規制を緩和するには、ある重要な前提条件があり、それは「2035年までにCO2の排出量が90%削減出来ていれば」というものです。つまり、脱炭素社会の実現が確実視されていれば、なにも自動車産業だけにeV化を押し付けなくとも気候変動は緩和できるだろうということなのです。
世の中が大きな変化を遂げているときには、既得権者たちが自分たちの利権を手放すまいと、必死に抵抗します。またそれになびく政治家やメディアも多く存在し、あらゆる角度から変革の難しさや失敗を印象付けようとします。
しかし、いま世界が共有する危機意識が、科学的データに基づき、多くの学術分野で見解が一致する以上、それは私たちが直面し対処せざるを得ない「現実」としての説得力を持つのです。それを認め、行動すること自体が人類の叡智であり、政治とは根本的に異なる点です。
急速な技術の進歩や世界を結ぶ物流ネットワーク。さらにはEコマースの発達で、世界は未だに大量消費時代から抜け出せていません。パソコンが発達して資料作りが格段に速くなり、品質も上がったことで、オフィスの業務量は減るだろうと期待されましたが、ますます多くの資料が求められ、業務量はむしろ増えたとも言われています。
消費財では大量生産でコストが下がり、必要でなくても、安いから買っておくという消費行動が蔓延しました。こうした矛盾や逆説は「ジェヴォンズのパラドックス」と呼ばれる現象です。自動車のエンジン性能が向上し、エネルギーを節約することで安く長距離ドライブが楽しめるようになり、燃料の消費量は減らずに、むしろ増える「逆説」がこれに相当します。
私たちの生活はジェヴォンズのパラドックスにより、資源消費量を増やし、環境や社会への負荷を増す方向に進んできました。天然資源の使用量が増えれば汚染の拡大や環境への悪影響も深刻になり、長期的には資源採取の制約から資源インフレを生むことにもなります。技術さえ向上すれば、持続可能性な社会に近づくというのは誤解なのです。
● サステナビリティの罠
環境負荷を抑えた商品であっても、必要なければ購入すべきではありません。環境に配慮した製品であっても販売量が増え続ければ、地球への負荷の総量は増大するからです。環境に配慮した商品であっても、それは少し「まし」なだけであり、大量に作って消費すれば、破滅への時間をすこし遅らせるだけなのです。資本主義に暮らす私たちに必要なのは、「成長の呪縛」から抜け出すことであり、それは「足るを知る」という質素な生き方に外なりません。
今、持っているものを再生したり、修理し、転売したりしながら極限まで使い尽くす暮らし方を再評価する必要があります。賢明な消費者は、保守メンテナンスをしっかりと行い、長い期間にわたって愛用する時代になるでしょう。また企業も、利益をメンテナンスや修理サービス、新装整備や転売のプラットフォームにシフトしてゆく時代が来るでしょう。
「より良い生産」と「賢い消費」。その両輪を回すことで、鉱物資源に乏しい日本といえども、失われた30年に決別し、新たなリーダーとして世界に範を示すことが出来ると確信しています。
トランプ政権をいくら非難しても、日本経済が活力を取り戻すことはありません。世界が注目するような智慧と価値を創出しつづける日本。それを目指すのが今世紀後半への成長のカギです。
サステナビリティ経営で、成長と資源使用量のデカップリング(相関関係の分離)を図り、本当に必要なものを価値に見合った価格で販売する経済を目指したいものです。
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