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SDGs・サステナビリティ通信 【 戦火に巻き込まれない国へ】

長く厳しかった今年の夏。気象庁の発表によれば、全国平均で平年より2.3℃程度高かったようです。パリ協定の国際合意にもかかわらず、その上限を早々と超えてしまったことに強い危機感を覚えます。それでも夕刻、散歩に出れば、汗ばむ気温は不快ながら、コオロギの鳴く音に懐かしさを感じます。早く秋が訪れ、熱帯夜から解放されたいですね。

殺戮の夏、飢餓に目を背ける世界

北半球各国で高温記録を更新する中、ウクライナの和平交渉は遅々として進んでいません。首都キーウの疲弊しきった市民の姿が報道されると心が痛みます。ガザでもイスラエルによる集団殺戮が続いています。空腹に喘ぐガザ市民に対し、食料援助の配給所を大幅に減らせば、人々が殺到し、混乱する当然です。パレスチナ人同士の口論や諍いを口実に、治安維持とうそぶいてイスラエル軍兵士は自動小銃を乱射しています。こうした明白な犯罪行為が看過されてよいはずがありません。内戦が続くスーダンの飢餓、ミャンマーを追われたイスラム少数派「ロヒンギャ」の苦難、コンゴやガーナの人権弾圧など、万物の霊長たる人間の愚かな戦いに、収まる気配はありません。

日本は戦争のない80年間を迎えることが出来ました。これは人類史上稀有な出来事であり、地政学的に見ても奇跡といえる「僥倖」です。私たちは、何か事件や事故があった時には、そのショックや悲惨さを記憶に留めますが、こうした「何もおきなかった80年間」の価値を再認識し、どのように紛争を避け、殺し合いに巻き込まれずに暮らすかを深く考える必要があります。東西冷戦からブロック経済圏の形成、グローバル競争を経て、遂にアメリカの国際的信頼や指導力が崩壊した今、私たちは歩むべき道が大きく蛇行するリスクに警戒しなければなりません。

人間と「戦う遺伝子」

SNSが普及し、先入観が変わることがあります。その一つが犬と猫の関係です。犬は強く、猫は弱い。犬を見れば猫は逃げるというのは、思い込みだったようです。同じ飼い主の下では彼等の関係は対等であり、争いが起きると犬より強い猫がたくさんいることを知りました。生き物にはすべからく戦う遺伝子があるとは言い切れないかもしれません。

自然界の厳しい掟「食物連鎖」は「弱肉強食」ともいわれ、植物を生産者とすれば、草食動物がこれを消費し、草食動物は肉食動物の餌となり、肉食動物もその頂点に立つ捕食動物に食べられてしまいます。全ての生き物は命が燃え尽きれば腐敗し、細菌やバクテリアによって分解され、栄養として植物に吸収される。その循環こそがゴミを出さない「エコシステム」であり、地球ではこの営みがずっと保たれてきました。

しかしながら、人間は生きる為とは言い切れない理由で資源や領土を巡って争いを繰り広げてきました。一握りの指導者が、身勝手に、性急に、武力によって戦いを仕掛けるのは、人類が歴史から学んだ叡智を活かせていない証拠です。

世界全体では今でも人口が増え続けていますが、82憶人が暮らすスペースは十分で、一人当たり2000㌔カロリーの食糧も生産できています。それをどのように配分すべきか、そこに英知を使わないことが問題なのです。

戦いを正当化するもの

私たちが子供に与える玩具にも、「戦い」を促すものがあります。特に男の子には戦争を想起させる玩具が多々ありました。電子ゲーム機器では過激な戦闘や、流血シーンを含むコンテンツも野放しです。幼い時から残忍な殺戮シーンに晒され、慣れることは大変危険なマインドコントロールだと感じます。将棋、チェスなどは知育に有効で、規制の対象ではありません。また子供同士が喧嘩しても、素手で戦えばその痛みから「手加減」という自制心を育てます。現代戦ではゲーム感覚でドローンを操縦し、敵兵をせん滅するようですが、モニター映像の先には、苦痛に悶絶し、泣き叫んでいる人間が必ずおり、それを悲しむ家族や友人が多数いるのです。

人間に闘争遺伝子が埋め込まれているとしても、スポーツ競技は、「秩序ある戦い」を学ぶ機会を提供しています。武道や団体球技などは、一定のルールの下で相手と競い、チームプレイやフェアプレイを学ぶ機会となりえます。ビジネスでも闘争心を生産性向上につなげ、より多くの人に成長機会を生み出すように導けば、それは挑戦心や良質の競争を生み出すでしょう。

期せずして始まり、止める機会を見いだせないのが戦争

外務省の友人に勧められ、「8月の砲声」を終え読みました。実際の戦争がいかに偶発的に起きるのか、また一旦戦争が始まれば、停戦や和平交渉がどれほど困難なものかを思い知らされます。よく「戦争に勝者はいない」と言われますが、銃を撃つのは常に私たち一般市民であり、見知らぬ敵兵に殺されるのものまた一般市民です。そして戦争には常にこれを悪用する武器産業や、軍需で儲ける多くの企業が群がります。在庫が積みあがれば売り捌き、新開発された武器は投資回収しなければ事業が成り立ちません。こうして戦争は広がり、長引き、当事者の圧力で収拾がつかなくなるのです。

NHKドラマ「総力戦研究所」は、日本がアメリカと開戦した場合のシミュレーションを担った官民合同シンクタンクの苦悩を描いた秀作でした。彼我の差を冷静に分析した当時の若手エリート達は、日本の末路をほぼ正確に見通せていたことが明らかにされています。日本人には「不都合な真実」を直視せず、精神論で蓋をする習性があるのです。

戦争は一旦始まってしまえば、「累積する犠牲に見合う戦果を得られない限り、和平合意に至らない」という政治的ジレンマを引き起こし、さらに多くの犠牲を呼び込みます。そういう真実は、世界中の戦史から十分証明されてきました。

歴史的教訓から、私たちは「足りない辛さ」よりも「分かち合える豊かさ」を実感できることに目を向けるべきであり、それが持続可能性の基本理念です。貧しさは、不幸の要素のひとつであるものの、貧しさを不幸と感じさせるものは「格差」です。社会全体で公平な分配が行われれば、不幸そのものはそれほど辛くないことを戦後史が証明しています。

自然界の生き物たちは、弱肉強食という厳しい掟の中にあっても、不必要な殺生はしません。食欲が満たされれば、それ以上他の生き物の命を奪うことは無いのです。ビジネスの世界でも、各企業の勝ち負けを競うのではなく、秩序ある共創と共存に向けて智慧を絞らなくてはなりません。

サステナビリティ経営では、経営者の視界を数十年先と、サプライチェーン全体に広げる思考変容が重要です。そしてそれは、30年後も百年後も、この国を戦争から守り、諸外国からパートナーとして尊敬される日本に向けた経営者の崇高な貢献策なのです。社会が混迷を極める今だからこそ、私たちは一隅を照らし続け、平和に寄与してゆきたいものです。

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