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SDGs・サステナビリティ通信 【 サステナビリティと創意工夫】

夏の風物詩と言えば、海水浴やキャンプなど、自然と触れ合う機会が多かったですが、40℃に達する今年は、安全確保の面で様々なイベントの開催可否が問われました。試合やイベントを強行すると健康被害を招きかねないなか、甲子園の全国高校野球大会の開会式や試合を夕方に移したのは英断です。

最近は工事現場などで、「空調服」をよく見かけます。発明したのはソニーの元技術者、市ヶ谷弘司さんです。「生理クーラーⓇ理論」といって、取り込んだ外気を服の中に巡回させ、気化熱で体の表面を冷やす仕組みです。これで多くの人たちを熱中症から救えるはずでしたが、外気温が35℃、湿度が70%を超えると、冷却効果が薄れてしまうとのこと。猛暑日が頻発するなか、ベビーカーの中で汗をかいている幼児の未来を想うと、申し訳ない気持ちで一杯になります。

サステナビリティと「未来価値

サステナビリティは、こうした環境や社会の問題に目を向け、問題を軽減したり、除去したり(緩和策)、また被害を最小限に食い止めるような技術開発をしたり、暮らし方を変えるなど(適応策)を実行に移すことです。その過程には様々な挑戦機会が生まれますが、これをビジネスチャンスに出来るかどうかは経営者の洞察力やセンスにかかっています。

被害が発生すると、救済や損害賠償が求められ、事業と被害の因果関係や相関関係が検証され、企業が対策を先延ばししていた場合には、損害賠償責任を負うリスクも出てきます。

そうした機会とリスクに配慮することは、バランスシートに現れる「現在価値」だけではなく、将来企業がどのような「未来価値」を目指すのかを考える経営姿勢と言えます。行き先も分からず列車に乗り続け、場当たり的に衣類を買うのと、行く場所を決め、準備万全で列車に乗るのでは、自ずと集まってくる社員の質も変わって来ます。

サステナビリティ経営に挑む経営者が悩むのは、当面の「コスト上昇」です。人権に配慮した資材や、環境負荷の少ないエネルギーは、ややもすると調達価格が割高になります。財政的にそれが許容できない場合はどうすべきか? それは経営者の「芯と信」による判断としか言いようがありません。しかし、多くの賛同者が集まり、技術革新やオペレーション改革が実現するまで諦めなければ、理想に近い状態には近づけるはずです。

登山では山頂近くのきつい所を「胸突き八丁」と言います。そこで諦めず、仲間と励まし合い、助け合って踏破できるかは、やってみなければ分かりません。経営者の Grid(=諦めない執念)が問われていると言えるでしょう。

サステナビリティとイノベーション

サステナビリティに取り組む国々では、私たちも学び、取り込むべき発明やノウハウがどんどん生まれています。そのいくつかをご紹介してゆきましょう。

・高層ビルがダムに?・・・水力発電は、水の力というより地球の万有引力を用いた技術です。貯水池に蓄えた水を、落下させてタービンを回し、電気を作ります。また「揚水発電」といって、電力需要の少ない夜間などに水を高台の貯水池に汲み上げ、日中に発電して供給容量を補うものです。私も大月市の設備を見学しましたが、その巨大さには圧倒されました。 同じ原理で水をコンクリートブロックに代えたのが重力発電所です。高層ビルの中に多くの昇降機を設置し、電力需要の低い時間に巨大なコンクリートの塊を数十メートルの高さまで引き上げ、留置します。電力需要が高い日中には、引力によってそれらが下に降りる力を制御しながら利用し、タービンを回して発電する仕組みです。既に実証実験で成功しており、都会の高層ビルが、実は巨大な発電所だったという未来がもうすぐ実現しそうです。

・道路が発電し、電気自動車に給電・・・日本が開発をリードする「ペロブスカイト太陽光パネル」も、湾曲出来るので平板のパネルに比べ、日の出から日没まで常に発電効率が高い創電が可能になります。またフランスが開発した高耐久太陽光パネルは、薄さが僅か6mmなので道路や駐車場に張り付けるだけで発電出来ます。摩擦係数も確保し、車が急停車してもパネルに損傷はないそうです。化石燃料への依存度を減らすことに世界中が取り組むなか、こうしたイノベーションが次々と生れています。迷走する超大国アメリカが、化石燃料に逆戻りすれば、貿易のみならず、先端科学の分野でも「脱アメリカ」が進んでしまいます。

・段ボール加工先進国ニッポン・・・リサイクル紙は割高という時代を経て、日本の古紙の回収率は94%、リサイクル材化率は90%に達しています。そうなればリサイクル・段ボールを使いやすくしようというニーズが自然と生まれ、日本では段ボールの加工技術が世界トップといわれています。耐圧加工、撥水加工、耐熱加工に加え、3D切削加工が段ボールの利用領域を飛躍的に広げたのです。災害用ベッドや幼児向け家具、水産物や燃料、飲料の容器、家屋の断熱材としても利用され、精密切削で緩衝材として、今では発泡スチロールや気泡緩衝材(プチプチ)の代用品化しています。

木材や化石燃料由来の資材を代替し、循環させることが出来る素晴らしい資材となり、市場規模も拡大。イベントや展示会の什器、車いすやベビーカー、仮設の壁やパーティションなど用途は無限に広がると思われます。

・「もったいない精神」が復活する欧州・・・フランスでは家電を中心に「修理可能性指標」を設け、どれくらい修理しやすいかを消費者に表示してきました。それに続いて「耐久性指標」を表示し、普通に使えば何年ぐらい壊れないかを消費者に示し選択に供しています。

オランダで生まれた「リペア・カフェ」は、壊れたおもちゃや自転車、家電製品や家具などを、町の公共スペースに持ち込めば、退職した元技師や修理のプロたちが無償で修理してくれる「ボランティア修理工房」です。既に世界で2500カ所が開設され、日本で広がりつつあります。メーカーも発想を転換し、PHILIPS社ではシェーバーの部品データを開示し、補修部品が無ければ3Dプリンタで自作して修理を可能にしていいます。図書館や地域住民センターにも共有3Dプリンターを設置し、「自分で治す努力」を自治体が応援しているのです。私たちは大量生産・大量消費・大量廃棄によって資源を使い尽くし、環境を汚染し、破壊し続け、多くの生き物たちの住処を奪ってきました。地球資源のリサイクル率は僅か10%程度、欧州ではこれを大幅に増やすべく、来年から「循環経済法」を施行する予定です。

世界の難題「交通渋滞」の解消に挑戦・・・人類に共通する最も貴重な個人資産は「時間」ではないでしょうか? 一旦消費すれば再度獲得することが不可能だからです。その時間を浪費させ、多くの二酸化炭素を排出させているのが交通渋滞です。物理原則では、道路などの交通容量に対し、交通量が一定値を超えると「渋滞」が発生します。天候やドライバーの高齢化などにも左右されます。NTTドコモは日本全国で、いつ、どこに、どんな人が行動しているのかを間断なくデータ収集し、解析し、数十分前の人口データを演算可能にしました。人の分布と交通の関係をAIに学習させ、予測モデルに当日のデータを入力すれば交通渋滞予測が出来、目的地までの渋滞や所要時間が予測可能になります。予測精度を上げて、回避ルートや移動のタイミングをずらすことで時間消費とCO2排出量、運転ストレスまで削減するう画期的な取り組みです。

 

サステナビリティ経営は、ずっと先の未来、自分の視界の先に暮らす人々の問題を知り、解決を考える経営哲学です。

それにビジネスを同軸化出来れば、事業の成長と社会・環境課題の解消が両立できるという訳です。誰でも成功できるほど容易ではありません。信念を持って、経営者としての芯を失わずに取り組めば、道は自ずと拓けてくるでしょう。

20年後、30年後に悔いが残らぬよう考え抜いて行動してゆきましょう。

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