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SDGs・サステナビリティ通信 【 2050年の子供たち

今年のゴールデンウイークは如何お過ごしになられたでしょうか? 

春先の労使交渉では、「満額回答」が続出し、景気回復の兆しかと期待したものの、食料品を中心に消費物価が高騰して実質賃金は低下。自宅や近場で過ごされた方も多かったと思います。長引く円安も影響し、海外旅行に行く人はコロナ前の水準に戻らぬ一方、海外からのインバウンド旅行客は過去最高を見込むとのこと。国民が生活するなかで、豊かさを実感できるのは、未だ暫く先のようです。

「2050年の子供たち」 

昨年末に発行された「国連・ユニセフの報告書」の日本語版が、4月末に完成しました。数値データがその大半を占めていますが、目に留まった記述をいくつか挙げてみますと:

・ 「2050 年代までに、世界人口は増え続けるが、子ども人口は現在とほぼ同じ23 億人前後で推移する」

・ 「人口に占める子どもの比率は、アフリカが40%程度に下がり、北米、西欧、東アジア、豪州、シンガポールなどの高所得諸国では19%以下に低下する見込み」

・ 「AI、再エネ、ワクチン等の先端技術によって、子どものQOLを格段に改善する可能性がある」

・ 「インターネットへのアクセス可能な人口は、低所得国では26%程度で、放置すればデジタル社会の中で新たな不平等を生む」といったところです。

子供を取り巻く環境は国によって大きく異なり、日本や韓国のように少子化に悩まされる国がある一方で、家庭当たり4~6人を生む途上国も多くあり、子供の暮らしは、「どの国で生まれるか」によって大きく左右されます。
2050年までに世界中で健全な育成環境を整備するには何をすべきなのでしょうか?

子供への期待と役割

中国では数字の「八」を「末広がり」、つまり代々家が繫栄し、家族が増えるのを表す幸運な数字として好みます。

日本でも「子だくさん」は繁栄の礎とされ、大家族のなかで、祖父母や兄弟が育児を分担するのが当たり前でした。戦後の復興期から高度経済成長期に至り、生産労働人口は全国各地から都市部に吸いこまれ、定着。両親と子供だけの「核家族」が2LDKほどの団地に暮らし、教育や娯楽にお金をかける世帯が増え、地方は過疎化しました。

途上国でも都市人口は既に55%に達し、2050年には世界人口の70%が都市部で暮らすと予測されます。これは産業構造の変化によるもので、労働集約的な農林水産業や製造業から、サービス・情報・エンターテインメント産業に向かって人口が移動。同時に「子供の位置づけ」も変化しました。かつて子供は働き手(=労働資本)であり、生計を分担するばかりか、親を養う福祉まで担っていました。

日米安保条約の下で経済成長を成し遂げ、医療や教育、健康保険や介護保険が充実してくると、子供に頼る必要はなくなり、むしろ「子育てで生じる制約や負担を懸念する」人が増えているように思われます。実際に子供が成人するまでには食費や教育費のみならず、医療や受験対策など、様々な負担が生じます。また成人後も、社会が閉塞感に包まれていれば、せっかく育てた子供たちが幸せに暮らせるかどうかも分かりません。

日本の出生数はピーク時(1947年)の270万人から72万人まで落ち込み、婚姻件数も50万件を下回っています。就職活動は売り手市場となり、大卒の求人倍率は1.75に達しました。そんな少子化の中でも、熊本に続き、東京でも「赤ちゃんポスト」が設けられました。昨年は、日本全体で228人もの新生児が殺されたり死体遺棄されているとの報道に耳を疑います。新生児を救い、「秘密出産」の支援も行う医療機関は、小さな人権を守る最後の砦として重要な取り組みとなります。失われた30年では自信と同時に、子育ての基盤となる社会の安心感も失ったようです。

2050年の子供たちを取り巻く環境予測

ユニセフの報告書には2000年代と2050年代を比較して様々な予測が述べられています。

・ 「世界の平均余命は女性70歳、男性66歳が、それぞれ81歳、76歳に延びる」

・ 「気象災害に晒される子どもの数は、熱波8倍、洪水3.1倍、山火事1.7倍、干ばつは1.3倍に増加する」

・ 「初等教育を修了できる人は80%から95.7%に、中等教育を修了する割合も40%から77%に増える」

・ 「紛争地に暮らす子共は8.3億人から、6.2億人に減少するが、アフリカでは7.6万人から1.6億人に増える」

なんと今から25年先でも、人間は殺戮を止めず、4人に1人の子供たちが命の危険に晒され続けるそうです。

世界の紛争地では多くの子供たちが命を奪われました。2022年2月以降、ウクライナで犠牲になった子どもは2,520人以上(死亡669人・負傷1,854人)。実際これより遥かに多いと推定されます。また2023年10月の戦闘開始以降、ガザ地区で殺された子どもの数は1万5613人に及びます。

日本では春の陽光に、鯉のぼりを掲げて「子供の日」を祝うことが出来ましたが、それは世界から隔絶された、豊かな島国のひと時の夢物語といえるようです。

「子どもの権利条約」

1989年の暮れ、国連総会において196の国と地域に採択・批准されているこの条約には、4つの原則があります。
①差別の禁止、②子どもの最善の利益の追求、③生命・生存及び発達に対する権利の保障、④子どもの意見の尊重

これらの4原則は、締結国全てで実現すべく、法整備を行い、国連に定期報告が求められています。

私たちはまず世界で起きている子どもの暮らしの実態を知り、事業との関りを探し出し、改善に向けた小さな行動に参加するべきです。2050年には世界中で全ての子供たちが、空腹を満たし、コミュニティの中で「4つの権利」が守られているよう、私も微力ながら一隅を照らしてゆきたいと思います。

いま私たちに求められているのは、社会の実情を直視し、行政やNGOと共に未来に向けて協働することです。

「不安から子供を産めない」という事態に陥らないよう、社会システムや事業のあり方を見直す必要があります。
そこにはきっと新たなビジネスのチャンスが生まれ、同時に子育てに希望を持てるような知恵がたくさん芽生えると思います。

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