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SDGs・サステナビリティ通信 【 民主主義のサステナビリティ 】

● 国際ニュースの憂鬱
第2期トランプ政権がスタートして以来、国際ニュースを見るたびに、驚き、呆れ、時には嫌悪感すら覚えることがあります。「当事者不在のウクライナ停戦協議」や「パレスチナ人を追放した後のガザの復興計画」、「多様な性自認の否定」、「根拠なき高関税」など、私たちの暮らしや経済の持続可能性を根幹から揺るがすようなドタバタ劇が、世界を混乱に落とし入れています。
本来、新しい政治リーダーが登場すれば、過去に縛られず、政策を見直すのは当然です。しかし根拠を明かさず、一方的な主張だけで、今まで築き上げてきた国同士の信頼や、国際支援制度、外交や貿易の国際秩序を崩壊させる身勝手な行動を目にすると、不安を覚え、事業への悪影響を心配する方も多いのではないでしょうか?
北朝鮮との首脳会談は派手に演出しただけで、時間稼ぎや核軍備増強を許したトランプ氏。 “取引の達人” を自称するのは厚顔無恥の極みです。このようなリーダーが世界をリードしてきた民主主義国家・アメリカ合衆国で、正当な手続きを経て選ばれたのは驚くべき事実です。日本では国家元首を有権者の直接投票で選ぶことはありませんが、このような「暴君」を生んでしまうリスクは無いのか点検し、当面はニュースを見守るしかないようです。
● 世界の国家体制
2024年のエコノミスト誌インテリジェンス・ユニットの分析では、世界の国家体制で最も多いのは独裁国家で、その数は60ヵ国、世界人口に占める割合は39%だそうです。次いで完全民主主義国家が25ヵ国で人口の僅か7%弱、欠陥民主主義国家が46で38%、混合政治国家が36で16%という結果でした。
国の成り立ちや置かれた状況、リーダーの資質次第では、独裁体制の方が国家を維持するのに好都合という仮説が成り立つのかもしれません。生まれた時から民主主義の下で暮らしてきた私たちは、民主主義がサステナブルな社会に相応しいと信じています。しかし、民主主義はこれを支え、機能させるための様々な努力が不可欠なこともまた事実です。主権者たる国民が政治や経済、社会や環境の置かれた状況を直視し、メディアが権力を監視しながら正しい情報を伝え、有権者が投票を通じて政治に参加し、納税や寄付などの方法で社会資本に投資したり、人材を投入する必要があります。
● 民主主義のリスク・・・「斉一性」とは
民主主義であっても、多数派が少数意見や封殺したり、反論を認めないことがしばしばあります。日本でも職場や地域など、様々なコミュニティーにおいて「みんながそう言っているから」とか、「大半の人がそう考えている」などと断じ、「同調圧」をかけることが良くあります。多数派が数を頼みに集団を導く「斉一性」は、全会一致や合意形成を求められるときに出やすく、「多数派の特権」や「マジョリティーのエゴ」とも言われます。
人間社会では、自然と多数派の利益を優先する傾向があります。例を挙げれば、多数派の利便性は追及する一方で、マイノリティを形成する「左利き」や、「障碍者」に対しては公平かつ十分な配慮をしないことなどです。
また、突き詰めるとハッキリとしない「みんな」や「空気」がその場を支配し、組織の決定を左右する日本。この「斉一性」の持つリスクをよく理解し、注意しなければ、少数派の意見は(たとえそれが正しくとも)封殺され、民主主義は「安直で不公正な多数決主義」に劣化してしまうでしょう。
● 論理的で公平な議論は「斉一性のリスク」を軽減する
「密室劇の金字塔」といわれる『12人の怒れる男たち』(1954年制作の米国テレビドラマ)は、陪審員に選ばれた人々が評決に至る葛藤をドキュメンタリー風に描いた名作で、「斉一性」のリスクを知るのに有効な映画です。何度も映画や舞台にリメークされ、日本でも1991年に『12人の優しい日本人』という映画が作られました。
作品ごとに、事件の内容や陪審員の設定は少しずつ異なりますが、ストーリーの共通点は、与えられた情報から先入観が生まれ、審議では強く主張する人の意見に他の陪審員が引き寄せられる点、また陪審員の多くが、容疑者の人生にどれほど多くの影響を与えるかをあまり実感していない点などです。忙しさを理由に、有罪でも無罪でも良いから早く決着をつけたがる人、大勢の意見に違和感を覚えつつ、論理的に反駁出来ない人、傍観者の意見を引き出そうと苦心する人など、様々な人間模様が描き出されます。評議が次第に熱を帯び、全員が議論に引き込まれてゆく姿をカメラが追い続けます。
「陪審員の全員一致」が評決の条件なので、少数意見や弱い声は、何度も潰されそうになります。ついには怒号が飛び交い、人格までも否定される弱い人々が必死になって同意を拒む。その人の育ってきた環境や、人格が浮き彫りになる中、最後は思いもしなかった評決にたどり着くというストーリーです。容疑者の今後の人生を大きく左右する評決も、民主主義社会の意思決定も、その重要性ゆえに中途半端な妥協や同調圧に屈しての妥協は許されません。それを映像を通じて疑似体験することに、この映画の魅力があるのではないかと思います。
● ネット社会と口コミ
国民一人一人がメディアとなり発信できるSNSの時代。口コミが影響力を持ち、何でも他人の意見を参考にする傾向が見られます。商品も標準化が進み、機能やデザインなど、大きく差が出ない(偏差が少ない)時代になりました。
料理や映画、本など、個人の趣向や価値観に応じて評価が変わるものであっても、口コミを参考に選ぶ人が増えています。ネット社会ではスマホ一つで「みんなの意見」が簡単に調べられ、自分で考え、意見を持つ必要が左程なくなったように錯覚する時代にいるように感じます。簡単に答えを見つけられる便利さが、悩み、迷いながら考え、言葉を紡ぐ作業を片隅に押しやろうとしています。
自分にとって都合の良い意見に耳を傾け、熟考せず、周囲の声に影響されてYESかNOを決めるのは、ある種の生活習慣病とも言えます。そうした生活習慣が有権者の投票行動を少しずつ支配すれば、民主主義は本来的価値である、「多様性を基盤とした衆議による智慧」を失いかねません。21世紀は長い人類史の中で「選択の時代」と言われます。労を惜しまず、後で悔やむことのない選択をすることは簡単ではありません。しかし試行錯誤を厭わずに未来合理的な判断を心がけることが持続可能な成長の条件ではないでしょうか。
サステナブルな経営が、これからもますます企業に浸透するよう期待し応援して行きたいと思います。
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