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SDGs・サステナビリティ通信 【 2025年のトップ・リスク 】

今年の天候の異変は、「気候変動」が定着し、徐々に「気候危機」に移行していることを実感させます。

「地球温暖化」という言葉から、私たちはさほど深刻な危機意識を持ちませんでした。しかし気候変動は、夏の気温上昇のみならず、年間を通じた「気候の極端化」を引き起しているのです。

「降れば洪水、降らねば干ばつ」が世界中で起きた昨年でしたが、日本でも「降ればドカ雪、降らねば山火事」が冬に常態化しかねません。少子高齢化も相俟って、日本に「気候極端化」で住めなくなる地域が増えないようにと願います。

●「トップ・リスク 2025」を読み解く

皆様はイアン・ブレマー氏という政治学者をご存知でしょうか? NHKスペシャルなどで世界情勢を解説する、アメリカの政治学者である彼は、ワシントンD.Cで「ユーラシア・グループ」というコンサルティング会社も経営し、地政学の観点から世界のリスクを分析しています。「もしトラ」が現実となり、トランプ政権が世界に与える混乱や、それに伴うリスクについて、世界中で関心が高まるなか、同社は「世界のトップリスク」報告書を公表しましたので、以下に要約します。

[リスク‐1]

リーダー国家の不在:トランプ政権が国益のみに執着し、グローバルリーダーの使命を蔑ろにする中、世界は群雄割拠の時代に入り、世界同時不況が起きた1930年代や冷戦初期に匹敵する、最も危険な時期に突入した

[リスク‐2]

三権分立が脅かされる:米国は大統領令の乱発に翻弄され、政府の監視役を無力化される

[リスク‐3]

国際社会が分断される:パワー・バランスを失った世界は、利権争いが蔓延し、国際協調は失速し、その結果、貧富の格差や民族間の対立が更に深まる。

[リスク‐4]
米国はインフレと孤立化により弱体化する:関税引き上げは自由貿易により繁栄してきた米国経済も直撃し、消費財の高騰、国際サプライチェーンの破断で国際分業が崩壊。インフレが国民生活を圧迫し内需は落ち込む。

[リスク‐5]
2025年にロシアは世界秩序を覆すべく暗躍する:武力による現状変更を容認すれば、国際法秩序は弱体化する。軍備拡張競争で景気は一時的に好転するものの、財政を圧迫し、国民福祉や技術投資は低減する。

[リスク‐6]
イランの衰退:イランが構築してきたガザ、レバノン、イエメンのイスラム教シーア派の武闘組織はイスラエルによって壊滅的打撃を受け、欧米の経済制裁がイラン国内の経済を疲弊させる。イランの不安定化は核武装を含めたグローバル・リスクの増大につながる。

[リスク‐7]
米・中対立が地経学的分断を加速する:2つの覇権主義国家の対立は激化し、G20加盟国も巻き込んだ新冷戦に発展。相互不信と対立を助長し、軍拡によって貴重な資源や人材が破壊活動へと注ぎ込まれる。

[リスク‐8]
AIの機能とリスクが無秩序に拡大する:生成AIの機能は、国際ルールの整備が遅れる中、制御不能なまま自己増殖する。サーバー攻撃やインターネット犯罪も深刻化し、DX投資にも影響を及ぼす。

[リスク‐9]
飢餓や貧困、感染症に苦しむ国家や国民が忘れられ、犠牲になる:分断と対立が国際協調を蔑ろにし、弱い立場にある国や地域への支援が減り、貧しい国や、多民族国家は一層不安定になる。新たなテロ組織や地域紛争が誘発され、憎悪の悪循環が成長を阻害する。

[リスク‐10]
メキシコが直面する課題:新興国の星として期待され、投資を集めてきたメキシコは、アメリカの輸入規制や移民規制で失速。アメリカ市場へのアクセスの良さと、低賃金が魅力だった同国は、その成長基盤を失いかねない。

いかがでしょうか? アメリカの存在感が大きいとはいえ、第2次トランプ政権が、これほど大きな負の影響を及ぼすのは驚きです。これらはあくまで予測であり、警報に過ぎません。その被害の程度も波及効果も推測困難です。しかし、この予測の幾つかが的中すれば、世界はまさに第3次世界大戦への入り口に差し掛かっていると言っても過言ではありません。

そうした懸念が深まる中、「トランプ・ゼレンスキー会談」の決裂は世界中にショックを与えました。トランプ氏の誇張や独りよがりの戯言に耐え続けていたゼレンスキー大統領でしたが、J.Dバンス副大統領の軽率な忠告に激高し、冷静さを欠いて糾弾した末、双方からの罵倒合戦となりました。

救助に来たレスキュー隊長が火事場泥棒に急変したかのようなトランプ大統領。良識あるアメリカ市民は停戦条件として突如浮上した「鉱物資源取引」に赤面しています。アメリカの支援中断で漁夫の利を得るのはプーチンと習近平。

早々に関係修復会議が設定されるようですが、ウクライナには米・露いずれかが土足で乗り込んでくるのは避けられそうもありません。それを回避するには、欧州の強いコミットメントである一方、それこそが、「欧州」対「中・露(北朝鮮)」の大規模戦争を誘発しかねません。

いまの世界情勢は、まるでB級映画のような展開です。自由主義の盟主・アメリカの暴走と凋落は、日本の企業経営者にとっても想定外の事態への備えを促す警鐘のように聞こえます。

日本への影響と対処の仕方

アメリカが生んだ空白地帯に、強引で個性的なグローバルリーダーが群雄割拠するなか、欧州や日本は秩序回復に向けて存在感を示す新たな機会を見出すでしょう。

関税バトルの原因である米国の貿易赤字は、中国の2,790億ドルを筆頭に、メキシコ1,520億ドル、ベトナム1,050 億ドルと続き、日本は700億ドルと7位に後退しています。これは日本が貿易不均衡解消に向け、互恵関係を指向してきた証でもあります。対米投資では日本が首位にあることから、JETROの試算ではトランプの関税引き上げで日本が若干の「漁夫の利」を得るとしています。日本は再エネの地産地消や食料の備蓄増で経済自立性を高め、足元を見られない交渉力を育んでおく必要があります。

中国は5%の成長を達成したとは公表したものの、過剰な不動産在庫で資金滞留が起き、未曾有の経済危機にあります。ロシアもウクライナの2倍の戦死者を出す中、戦費捻出のため原油やガスを叩き売り、経済は破綻寸前。そうした中、「チームUSA」の一員である日本は、アメリカの孤立を回避すべくトランプ政権と密な対話が求められます。

日本企業は国際情勢が流動化するなか、サプライチェーンの見直しを迫られそうです。原材料や資材の新たな供給先の開拓や、代替品の検討も事業のサステナビリティには必要です。海外取引が多い場合は、現預金を日本円とドル口座などに分散してリスクヘッジしたり、為替の変動に備えて折半ルール(例えば為替が6%変動した場合は双方で3%ずつ吸収してインパクトを抑えるなど)に合意しておくのも良いでしょう。

事業規模が小さかろうと、国内に限定されていようと、資源小国で、国内市場が縮小する以上、国際情勢の影響を受けることは避けられません。日本人は「リスク」というと、負のイメージばかり抱きがちですが、リスクは対策さえしておけば、競合他社を引き離すチャンスにもなりえます。

マクロ経済はミクロ経済が集積したビッグ・ピクチャーですが、その動向はミクロ経済に跳ね返ってきます。サステナビリティ経営はこうしたビッグ・ピクチャーを俯瞰しつつ、広い視野で、20年先の未来にも関心を持つことです。

木を見て森も見る。木の枝にとまる鳥を愛でつつ、上空の雲を眺める。

経営トップにはそうした複眼的視座を持って頂きたいと思います。

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