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SDGs・サステナビリティ通信 【 Gゼロ時代の到来 】

豪雪地帯で被害に遭われている方々には、心よりお見舞い申し上げます。
気候変動が夏の気温上昇のみならず、地球の水循環全体を狂わせ始めているとすれば、緩和策と同時に適応策を急がないと、気象災害の拡大が大いに憂慮されます。被害総額25.6兆円ともいわれるロスアンゼルスの森林火災は、損害保険を機能不全に陥れてしまいました。ロスアンゼルス近郊の丘陵地では今後、保険料が暴騰し、もはや一般市民は契約が結べなくなるとまで懸念が広がっています。
●Gゼロ時代の到来
第2次トランプ政権が発足してから約1ヶ月が経ちました。創造以上に政治的混乱が生じて。
国際法を遵守し、「一方的な現状変更は認めない」と主張してきたアメリカ合衆国が、突如グリーンランドの領有や、メキシコ湾の改名を持ち出し、“NAFTA・北米自由貿易協定”での合意を無視した関税引き上げを突き出しています。
国際ビジネスの世界では「Bluffing」、つまり交渉相手の意表を突いて、非現実的な主張を押し付け、相当てが困惑しているうちに交渉を畳みかけることは散見されます。「価格を半分にしないと全数キャンセルする」とか、「売れ残りを全品買い戻さなければ、コスト以下で市場に放出する」など、無茶苦茶な提案をぶつけ、面食らっている相手に、それよりはマシな条件で妥結点を見出そうという、プロの営業マンからすれば不遜で未熟な交渉術です。
こうした手法はビジネスでも禁忌ですが、これを超大国が国際政治に持ち込むと、その国の品位や尊厳を自ら棄て去るに等しい愚挙と言わざるを得ません。このような変貌は世界を不安定で危険な状況に引きずり込みます。これから数年間、世界秩序は迷走状態に陥るかもしれません。その予兆を見るとき、私たちは「有権者の直接投票によって選ばれる 大統領制のリスク」を思い知らされます。頼りにしてきた米国民主主義の脆弱性が露呈しはじめたからです。
主権者たる国民が正しい情報を選りすぐり、みずから努力して見識を高め、理性に基いて判断しなければ、民主主義国家といえども独裁国家に堕落しかねません。真偽が定かではないSNS情報は日本の選挙も翻弄されつつあります。
「Gゼロの時代」、それは国際社会の中で、手本となるリーダーが見えなくなる時代を意味します。社会正義やモラルなどの、基点が定まらない時代ともいえます。こうした混迷の時代にあって、企業のマネジメントはどう行動すべきか? 価値観の違いによる「対立」を避け、多様性に立脚した建設的な議論をするには何が必要なのでしょうか?
●リベラル・アーツの真意
教養や見識を指す広義の言葉として「リベラル・アーツ」があります。データや史実を記憶しているだけの知識とは異なり、それらを用いて思索し、仮定や推論を経て進路を決めるときに役立つのが教養です。
広い教養や高い見識などと表現され、そこには広がりや奥行き、深さやレベルなど様々な尺度があります。企業経営にはこうした教養や見識が大切です。学歴は18歳前後の記憶力の証明に過ぎませんが、教養は学歴よりも遥かに役に立ちます。学歴は大学を卒業したという事実以上に、大学生活で多様な友人と思索し、真剣で自由闊達に議論して生まれる価値を指すべきです。それは、大学に行かなくても、或いは卒業してからでも修行を積んで体得出来ます。自らが好奇心を抱いて自発的に学び、意思決定を積み重ねたことこそが、「学+歴=学歴」なのではないでしょうか?
日本には34万人の医師、100万人の教師、5万人の法曹関係者がいますが、そのすべてが国家試験を経て資格を持っています。しかし世界を通じて、政治家や企業経営者には「国家資格」が必要ありません。何故でしょうか?
それは「手本のない新しい時代に、自ら進路を導き出す力」が求められているからです。リーダーシップを発揮するには、狭い領域の技術的知識や経験則よりも、歴史からの学びや、変化がもたらす影響、人間への深い洞察などが、より重要だからではないかと思います。資格試験で証明できる領域よりも、はるかに広く、深い空間で考え、悩み、答えを見出す力量が求められていると言っても良いでしょう。
新たな局面でそうした判断力を支えるのが「リベラル・アーツ」です。米国カレッジ・大学協会では、「個人の能力を開花させ、困難や多様性、変化へ対応する力を身につけさせ、科学や文化、社会などの幅広い知識とともに、より深い専門知識を習得させるのがリベラル・アーツである」と定義しています。それは即ち、「その時代の社会通念や法律・宗教、従来の価値観や先入観に縛られず、自由な発想で多様な議論を経ながら、最適解を自ら見い出す」とも読めます。
「自由の殿堂」を標榜する一橋大学や、「学の独立」を唱える早稲田大学のように、自由や独立は、国家権力や企業に尻尾を振らず、忖度もせず、主体的に学び考える姿勢を強調するものです。同様に自由主義経済も、社会の秩序は尊びつつ、規制や圧力から自由である(Free from・・・)ことを、そのエネルギーの源泉とするものです。
●「疾風に勁草を知る」
SDGsは本当に地球規模課題の解決に向けた正しい施策なのか? サステナビリティ経営で「事業と社会課題の解決を同軸化する」ことは企業に持続可能な成長を約束してくれるのか? リーダーシップが蒸発してしまった「Gゼロの世界」では、経営者の皆さん一人一人がいま一度、その答えを検証する必要があるでしょう。
風向きが変われば、信念を持たない経営者は落ち着きを失います。巨大グローバル企業GAFAMのCEO連中ですら、時の権力者に阿るものが出てきています。企業経営に於いて、信念を貫くのは決して容易ではないと思います。そこで悩むのもまた経営者の宿命です。
強い風が吹けば、雑草の多くは風に押し倒されてしまいます。そこに姿を現すのが勁草、すなわち芯の強い草です。
決して茎が固いわけではなく、しなやかで折れない強さがあります。サステナブル用語ではレジリエンス(復興力)と言いますが、日本にはこうした勁草に値する企業が比較的多かったように思います。
正しいことは正しいと自ら判断する力、それを政治や社会のせいにせず、護り続ける強さが日本の「勁草たる資質」ではないでしょうか? SDGsやサステナビリティ、ESGはみな横文字です。しかし、その中核をなす理念は日本の企業経営にも共通するものが多いと感じてきました。経営理念や行動規範はその基本に於いてパーパス経営と起源をひとつにするものだと言えます。欧州ではサステナビリティ経営は揺らぎもしていませんが、アメリカの迷走は今後しばらく続くでしょう。
日本が勁草たる資質を世界に見せられる絶好の機会といえるでしょう。
●アメリカでは「赤い州」でもサステナビリティを推進
大手メディアの報道には多かれ少なかれ、言語の壁による誤謬が含まれています。ワイドショーの人気ホストだったトランプ氏の発言は、週刊誌の見出し同様、過激な表現で周囲の度肝を抜けば成功と考えているようです。
しかしアメリカの経営者の多くはとても優秀です。事業の付加価値向上にむけ、イノベーションへの投資を躊躇しません。AIや再エネ、蓄電技術やロボティクスなどの成長分野では特に顕著です。そしてそれは共和党が強い州、通称「レッド・ステーツ(共和党のシンボルカラーが赤色であることに由来)」でも同じです。
欧州に限らず、東南アジアでも北米でもEV化の移行は着実に進行しています。それはEVの故障率が低く、メンテナンス費用が安いこと、人間の運転よりも安全と言われる自動運転への移行のしやすさ、SDVの持つ機動性など、様々な理由による自然の流れです。アメリカの企業経営者がリベラル・アーツを重用し続ければ、これから先もサステナビリティ経営は進化し続けるでしょう。
大きな躍進に向けた自由な発想、真理を見据えた経営がこれからも主流であり続けるよう、期待しております。
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