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SDGs・サステナビリティ通信【サステナビリティへの投票】

はやいもので、本年も残すところ、あと1か月余りとなりました。

今年は「世界の選挙イヤー」と言われるように、多くの国々で大統領選挙や国政選挙が連なり、政治の変化が起きました。世界196ヵ国の中で、四分の一にあたる44の国で国政を左右する選挙が行われました。1月の台湾総統選に始まり、2月はインドネシア、3月はロシアの大統領選挙、4月の韓国に続く5月のインド総選挙、6月には欧州議会やメキシコ大統領選、7月はイギリスとフランスの総選挙、そして10月に日本の衆議院選挙があり、11月はアメリカ大統領選挙と、目まぐるしい年でした。

選挙も、投票で国民がリーダーを選ぶ国もあれば、独裁者が対立候補を迫害し、形だけ選挙を演出する国もあります。また「衆議を尽くすための選挙」もあれば、「ポピュリズムに翻弄された選挙」もあったようです。

米国のトランプ再選の衝撃

アメリカ大統領選挙でトランプ元大統領が再選を果たしたのは、海外から見る限り、とても不可解な結果に見えます。アメリカでは多数を占めていた中間所得層が激減し、格差が拡大。かつてのような宗教的モラルや、家庭の団らんが失われています。公立学校の荒廃、困難な帰還兵の社会復帰、インフレや薬物依存、人種差別、銃による無差別殺人などが深刻化しています。アメリカ国民は従来の政党政治に不信感を抱き、スーパーヒーローの登場を渇望するようになってゆきます。そうした状況は大統領が変わったからといって劇的に変わるはずもないのですが、それほど閉塞感が強いのかもしれません。政権交代により、自国第一主義が国際秩序を軽んじ、世界経済の混乱や、気候変動対策が停滞すれば、それはトランプ大統領のみならず、トランプ氏を選んだアメリカ国民に対する不信感にも発展しかねません。

国民投票によって、政権が平和的に交代するのは素晴らしいことですが、その前提には主権者の倫理感や氾濫する情報の中から正しい情報を識別する力が不可欠です。フェイクニュースや偏った主張が混在するSNSが影響力を増す現在、民主主義を維持するには、その脆弱性にも目を向ける必要がありそうです。

アメリカ不在の間隙を突く、英国と中国のエネルギー戦略

国連の気候変動条約締結国会議、COP29が旧ソ連圏のアゼルバイジャン共和国で開かれています。アメリカが再びパリ協定から脱退するのではという懸念のもと、英国のスターマー首相や、中国の習近平主席が脚光を浴びています。

英国は蒸気機関の発明で産業革命を興し、大英帝国を築きました。しかし温室効果ガスが人類存亡の危機を招くと科学が証明して以来、エネルギー政策を大転換し、脱化石燃料・脱炭素を新たな成長産業と位置付けました。3年前に英国・グラスゴーで開催されたCOP26での公約どおり、石炭火力発電所はすべて閉鎖しました。石炭で世界のリーダーに君臨した英国が真っ先に脱石炭を実現し、スターマー首相は2035年までに温室効果ガスの排出を81%削減すると発表し、世界の称賛を浴びています。それに対抗するように、世界最大の排出国・中国も、「中国エネルギー法」を可決。2030年をCO2排出のピークとし、2060年にはカーボンニュートラルを実現すると公約。既に太陽光発電や風力発電の設備容量では、中国がそれ以外の国々の容量の約2倍を達成しています。トランプ政権復活をアメリカ凋落の好機と捉え、今後はバイオマス燃料やグリーン水素の製造にも取り組み、脱化石社会のリーダーを目指します。

そのアメリカでもビジネス界では早くもトランプ次期大統領を見限る動きが出ています。脱炭素社会を目指す広範な絆、「America Is All In」という連盟で、5000を超す大企業や業界団体、24州の知事などで結成されるこの組織は、アメリカの人口の約6割、GDPでは約74%をカバーするという巨大なものです。気候変動対策に関しては、もはや政府任せにはせず、国民生活の深刻なリスクと認識されているからです。

斎藤知事再選の意外性

日本でも兵庫県知事選挙の結果は意外性をもって報じられています。マスメディアの連日の糾弾で再起不能と思われた斎藤知事が、選挙メディアとしてSNSの効力を最大限に引き出したのです。SNSの情報は発信責任が問いづらい為、玉石混交であり、どの情報を信じるかは選挙民次第です。いずれにせよ、斎藤候補は兵庫県民の民意によって再選されました。民主主義の維持と改善に向け、選挙とSNS情報の関係性や、自ら当選を目指さず他の候補の応援に回った立花候補の異常行動など、今後の選挙システムの運用に向け新しい課題が浮上しています。今後は電子投票の是非や、投票の義務化やインセンティブ、デマ情報や選挙妨害など、選挙システムの改善に向け多くの論点に取り組まなくてはなりません。そうした議論に参加し、選挙システムの機能拡充と価値を高めてゆくことが、民主主義のサステナビリティを守り、育てる基盤なってゆきます。

身近な民主主義・・・「買い物カゴ投票」

選挙の話まもうたくさん、、、という方に、もっと身近な投票の例をご紹介します。

世界最大の国際環境NGO、WWFでは、滋賀大学と共同で「消費者投票」という新しい手法で民意把握に取り組んでいます。政治より、もっと生活に密着した選択について、多くの消費者から意見を吸い上げる実験です。

買い物で訪れるスーパーマーケットなどでは、消費者がお店のカゴに商品を入れ、最後にレジで支払いを済ませます。そのカゴを戻す場所に、お店が問いを設け、お客様が、賛成ならYESの場所に、反対ならNOの場所にカゴを積み重ねてもらうというシンプルな投票です。

設問は、お店が検討中の環境対策が中心で、例えば「コープ・みらい」が実施したのは、以下のような質問です。

  • 節電のために冷蔵ケースや冷凍ケースに扉をつけてもいいですか?(省エネルギー)
  • 「量り売りコーナー」を設けたら、あなたは利用してみたいですか?(食品ロス削減)
  • 魚や肉を「トレー売り」から「ばら売り」にしても良いですか?(プラスチックごみ削減)

消費者の多くは一瞬で考え、カゴを戻す場所を選ぶことで投票しています。迷ったり、時間がなくて適当に置く人も一定数いるとしても、お店の判断には大変参考になる民意だと思います。こうした「自ら考え、選ぶ」習慣を育て、集めた意見を経営判断に生かすのは素晴らしいと思います。民主主義は単なる多数決主義ではないので、少数意見にも注意し、配慮が必要なことは言うまでもありません。短い動画が公開されていますので、ご興味ある方はご覧ください。https://www.wwf.or.jp/campaign/shoppingbasketvoting/images/movie.mp4

民主主義国家に生まれた私たち日本人は、未来に向けて、ひとりひとりの意思を示し、投票することが可能です。しかし他の国の多くは、こうした当たり前の社会参加が出来ない状況にあります。幸いなことに、私は選挙権を得てから「あなたの意見は聞く必要がない」と言われたことがなく、その辛さや失望を体験したことがありません。私たちには民主主義の良さを実証し、世界中の人々が自分の考えを示す権利を得て、将来を選択できるように支援してゆく必要があります。そのためには「投票という、サステナブルで小さな行動」を続けてゆくことが不可欠でしょう。 

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