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SDGs・サステナビリティ通信【国のサステナビリティと民主主義】
待ち望んだ秋でしたが、気温の乱高下で体調を崩す人が続出しています。皆様いかがお過ごしでしょうか?
異常気象は日本だけの話ではありません。オーストラリアは南半球なので、8月は真冬になりますが、なんと平均気温を16度も上回る39.6℃を記録し、ブラジルでも気温上昇による深刻な干ばつでアマゾン河が干上がって水上交通がマヒしています。
人間は衣服や冷暖房機器である程度は対応が可能ですが、自然界の動植物の中には、こうした異常気象に即応できないものが多いことが、10月10日に公表されたWWFの「生きている地球レポート2024」に示されています。調査を開始した1970以降の50余年で、生物多様性を示す脊椎動物の種類や個体群、生息地は73%も減少しているというのです。20世紀半ば以降、人間は家畜とペットしか暮らせない地球を目指して猪突猛進しているということです。
それが人類にとって致命的なリスクを招くとは思いもせず。
国のサステナビリティと民主主義
人間が他の生き物の命を大切に思わなくなると、その延長線上には、人間同士の対立を招きます。自国第一主義は他の国の安定や存続に配慮しなくなり、自分の幸福実現に向け、犠牲を厭わないという考えに至る可能性があります。ウクライナやガザの惨劇はその一例ですが、こうした短絡的思考に警鐘を鳴らし、独裁者や国粋主義者に国を乗っ取られないようにするのが国家安全保障、すなわち「国のサステナビリティ」です。
政府やメディアに頼るだけではなく、NGOなどの市民社会団体や、私達自身で監視し、正しい判断と選択をしてゆくしかありません。民主主義は主権者を国民という大集団と定め、投票によって指導者たちを選んでいますが、誤謬に満ちたプロパガンダによって、ファラシーを持つ国民が如何に生まれるかは、アメリカ大統領選を見ても明らかです。
国のサステナビリティについて考えるとき、民主主義は理想形とは言い難いものの、共産主義や独裁政権国家よりは良いであろうと思います。しかし民主主義を奉じている国であっても、「選挙民の関与の仕方次第で、指導者の質が大きく左右される」のは歴史が示す事実です。民主主義と雖も、これを正しく機能させなければ国民を抑圧する独裁者すら生みかねません。民主主義の定義や運用の仕方については、他の民主主義国家の歩みを参考に、主権者たる国民が議論し、教育にも取り入れ、選挙に行くのを当然の行いとして広めるしかないのです。
企業献金と政治
日本は敗戦後、80年近く戦禍に巻き込まれることもなく、驚異的な経済成長を実現してきました。これにすっかり慣れ、「国家のサステナビリティ」は失われることは無いなどと考えられているのではないでしょうか。国家の運営は一握りの政治家や官僚、企業経営者に任せきりという陋習がずっと続いてきました。
しかし企業の政治献金が今日のように横行すれば、政治に影響を及ぼさないはずはありません。現在の社会で既得権を持つ企業や団体は、純粋に国のためを思って政治献金するわけではなく、まずは自分たちの利権を守り、これに反する規制を回避するために「紐の付いたお金」を政治に“投資”しているからです。
その一例として、再生可能エネルギーは世界的普及により発電コストは大きく下がり、蓄電池の容量やコストも大幅な改善が見られ、化石燃料以下で発電できるようになりました。しかし日本は未だに再エネ発電比率が20%近辺に低迷したままです。世界では既に47カ国で再エネ発電比率が50%を超えていますが、日本は30兆円にも達する国富を化石燃料の調達に費やしているため、燃料代ゼロの再エネ電力で国際競争力を高めて行く国々に劣後するのは時間の問題です。こうした基本政策を見ても、政府は石炭火力発電や原子力発電に重きを置いてきた事業者の強い圧力により、未来合理性を熟慮せず、経済合理性すらも満たさない化石燃料施設の温存に腐心している始末です。
政治の質は、総体としての有権者の質を超えることは無い
今回の衆議院選挙では、こうした企業献金を巡って各党が立場の違いを明確にしています。
国民・国家の将来を見据えた政治改革を求めるのか、偏った既得権者優先の政治を放置するのか、その判断は私たち有権者に委ねられています。しかし一方で、今回の選挙で政権交代が実現し、野党のいずれかが政権を担うようになったら、強大な官僚機構を動かし、日米同盟を核とする外交・安全保障を堅持できるのか? また、したたかな経済界と建設的な協調関係を作り上げられるのか、これまた非常にリスクの高い賭けとも言わざるを得ません。東日本大震災直後の大混乱や、日米外交の存続危機など、過去の様々な失敗を踏まえた上で、今回の投票が求められます。
少子高齢化のなか、選挙権を18歳以上に広げたのは、次世代を担う若者の政治参加を促す点では正しい選択でした。しかし若い有権者の投票率は高齢者の半数以下に留まり、投票者総数に占める割合は2%未満と、インパクトは僅かでした。若者の無関心、政治不信、旧態依然とした投票システムなど、理由は様々ですが、ここには大きな改善余地がありそうです。
こうした課題意識から、多くの大学で学生に投票を呼び掛けるサークルが生まれ、また自分の考えに合う候補者を見つけ出すスマホのアプリが開発されるなど、草の根的な動きが広まってきたのは喜ばしい傾向です。自分たちにとって誰が良いかという視点のみならず、将来の社会の在り方や、社会的弱者への配慮、環境や人権などの社会問題を知る上でも選挙は非常に有効で重要な機会となり得るからです。
選挙を試行錯誤する勇気
有権者に投票を義務付けている国は、イタリア、ブラジル、シンガポール、オーストラリアなど23か国もあります。そのうち11カ国は罰則を設けていませんが、残りの12カ国では罰金や選挙人名簿からの登録抹消、公職禁止など、大変厳しい罰則を設けている国もあります。こうした強制的な投票は日本の文化に馴染まないという声が支配的ですが、それではどうすれば日本の民主主義を着実に機能させることが出来るでしょうか?
選挙が民主主義の根幹である以上、安易な変更はできませんが、変更を想定したシミュレーションは可能です。AIを活用した「デジタルツイン技術」が開発され、大型タンカーの建造計画や、巨大ビルの作業工程などを要素分解し、要素が変化した場合の影響と対応策を即座に示すという先端技術です。
これを選挙シミュレーションに当てはめたとき、例えば原発の稼働年限を延ばすかどうかについては18~30歳の若者の意見を高齢者の2倍に加算して投票結果に反映させたり、回復困難な病に罹った高齢者の安楽死に関しては高齢者層の声を50%割り増しして反映することも、試算としては示すことが可能です。今回の選挙では、婚姻届出における「選択的夫婦別姓」や「同性婚」についても、各党の主張の差が鮮明になってきています。こうした社会の様々な意思決定について、これから新しいシミュレーション・ツールや支援ツールが出てきますので、私たちが政策決定に参加する選択肢も多様になってきます。国としてのサステナビリティが大きく左右される国政選挙には、こうしたイノベーションを駆使した民意の反映が重要になってくるでしょう
私たちは、未来を明るくするための努力を続けているでしょうか? 私たち一人一人が社会のあるべき姿を考え、そこに至る道筋を議論し、歩まなければ、社会は進むべき方向を見誤る可能性があります。サステナビリティの本質を理解し、正しい投票行動をとることはリーダーとしての基本中の基本ではないでしょうか?
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