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SDGs・サステナビリティ通信【国連未来サミット閉幕】
異常に長かった猛暑が去り、突然、秋の到来を実感するようになりました。皆様、体調など崩していないでしょうか?
今月もサステナビリティの動きに関する情報をお届けしたいと思います。大きな流れの中から、皆様のビジネスにとってどのような影響や機会が訪れるかを想像しながらお読みいただけると幸いです。
先月は「俯瞰力」についてお話をさせて頂きました。
世界の自然環境や経済活動を地球規模で俯瞰し、解決しなければ生き続けることが困難になるような重要課題を抽出し、数値目標を定めたのがSDGsです。各国の代表で構成される世界最大のNGOとして、軍事力を持たない国連は、紛争を力ずくで止めるのではなく、紛争の種を摘み取る方向に進んできました。しかし実際の効果については、ウクライナ紛争やガザの情勢を見ても国連の機能に対しては疑問視されています。
●「国連未来サミット」
そんな中、9月22~23日にニューヨーク市の国連本部で「国連未来サミット」が開催されました。グテーレス事務総長は「国連安保理はもう時代遅れで、権威を失いつつある。安保理を構成する国や運営方法を抜本的に改革しなければ、信頼を失う」と危機感を露わにし、国連改革の必要性を訴えました。
周到な準備を経て採択された「未来のための協定」は、①持続可能な開発と資金 ②国際平和と安全 ③科学・技術・イノベーションとデジタル協力 ④若者および将来世代 ⑤グローバル・ガバナンスの変革、の5分野で加盟国の合意を得ました。その過程ではロシア、北朝鮮、イランなどが欧米偏重や内政干渉を理由に強い不満を示しました。
今後はこの協定実施に向け、世界のお金の流れを変える「持続可能な責任ある金融システムの構築」が急がれます。
●日本の主張
岸田総理は自らの首脳外交の締めくくりとして登壇され、「平和で自由で豊かな世界の未来」に向けて、5つの遵守事項を強調しました。それは「法の支配」 ②「人間の尊厳」 ③「人への投資」 ④核軍縮・不拡散 ⑤国連安全保障理事会の改革です。大変的を得たスピーチでしたが、日本国内の人権擁護の不備や、再生可能エネルギーへの転換の遅れ、女性活躍や働き方の多様性の遅れが目立ち、以前に比べて経済力を失い、国際貢献も陰りが見える日本の首相声は、残念ながらあまり響かなかったようです。
●SDGs進捗状況
世界が協力して解決すべき17の課題をまとめたSDGsですが、今年6月に出された「国連SDGsレポート2024」によれば、順調に進捗しているのは全体の僅か17%に過ぎないことが報告されています。それはパンデミックやウクライナ侵略戦争、中東の武力衝突、欧米と中露の地政学的緊張、気象災害の激甚化などが影響しているからでもあります。このままでは失敗に終わる可能性もあり、有識者の間では期間延長や目標の見直しを求める声もあがっています。
現状は兎も角、SDGsによって一定の成果を成し遂げたものに、各国の基礎データの整備、世界的な再エネ移行への機運の高まり、インターネットアクセス人口の拡大、HIVの拡大阻止など着実な成果も挙げられます。
また目標12の「作る責任・使う責任」では企業が省資源・資源循環に取り組む姿が多く見られ、成長と資源消費量のデカップリングが成功し始めています。さらに目標14と15にまたがる「生物多様性の保全と回復」でもTNFDの取り組みが始まり、企業の自然への依存と影響の関係について情報開示が具体化しています。
では停滞または後退してしまったものは何でしょうか? それは目標1の「貧困格差」、目標2の「飢餓」、目標3の「医療アクセス」や目標11の「レジリエントな町づくり」、そして目標16の「平和と公正」などです。格差は依然として大きく、飢餓人口が減らない一方で、皮肉なことに肥満人口も増え続けています。82億人による公正な分配の難しさが感じられます。
●SDGsの期間延長・目標更新論
こうした目標達成への遅れに対し欧米の学者10名が連名で科学誌「Nature」にSDGsの期限を2050年に延ばし、目標や指標も時代の変化に合うように見直すべきとの意見を寄稿しました。世界で共通の目標を掲げ、各国の努力を可視化する意義が十分あることを認めた上での「建設的な提案」と言って良いでしょう。
また生成AI技術の飛躍的な進歩により、その功罪を明らかにし、運用ルールを国際的に整備する必要性を訴える声も大きくなっています。AIは医療や医薬品開発に大きく貢献することが期待される一方で、偽情報による選挙妨害や、大衆を間違った方向に先導する「認知戦」に悪用されることが明らかだからです。
世界126カ国/36万人の実務家・学者等で作る国際NGOの「Global Alliance for PR and Communication Management」は国連に対し「責任あるコミュニケーション」をSDGsの18番目の目標として新たに取り入れることを提案しています。表現や主張の自由を認める一方で、責任あるコミュニケーションを逸脱すると、世界は分断や誤解に基づく紛争へと引き込まれてしまうからです。これに対し、国連は「情報の誠実性のための国連グローバル原則」を発表し、各国政府、テック企業、AI開発企業に協力を要請しています。
●日本の課題
こうしてSDGsの効用を基本的に認めつつ、その効果をもっと大きくするための提言が世界中から寄せられています。
そうした中、日本では所得の再分配、女性の議席数・役員数の少なさによる意思決定への参加不足、男女や非正規雇用の賃金格差、再エネ比率の低迷、電子廃棄物の増大、プラスチック廃棄物の海外移転、カーボンプライシングの遅れ、淡水域の環境劣化、公益通報と人権擁護などの面で、改善すべき大きな課題がまだ多く見られます。SDGs達成度ランキングでは世界21位から18位に改善したものの、理想の国にはまだまだ距離が縮まっていないようです。
日本が国際社会でリーダーシップを執るにためには、持続可能な社会を自ら体現し、世界に模範を示す必要がありますが、私は日本にはその資質も可能性も十分あると思っています。
公平で平和な社会は実現可能です。社会と企業の利益を同軸化し、信念と執念をもって当たれば実現できます。サステナビリティを学ぶ機会に恵まれた私たちは、もはや逆戻りは許されません。歴史の中で託された使命は重く、苦労が絶えませんが、声を掛け合い、力を合わせて行動するリーダーを増やしてゆきましょう。
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