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SDGs・サステナビリティ通信【サプライチェーン】
いつも大変お世話になっております、日本ノハム協会の筒井です。今回も、SDGsやサステナビリティを巡る話題について、お話させて頂きます。
今回のテーマは、「サプライチェーンとSDGs」について一緒に考えて頂ければと思います。
●身近な商品が突然姿を消すリスク
日本はエネルギーの88%を海外に依存しています。衣料品では何と97%、食料では62%を海外からの輸入に依存しており、G7・先進7カ国の中でも最も対外依存度の高い国です。高度経済成長期には膨大な貿易黒字を背景に、高い購買力で何でも世界から調達することが出来ましたが、開発途上国が成長し、各国の経済力が高まるにつれ、購買力の差はだんだん解消され、エネルギーや食料品などの生活必需品は生産国の内需が優先されてゆきます。
中近東の増産投資が敬遠される中、戦争によって更に需給バランスを失った原油や天然ガスは、あらゆる業界で経済活動のコストを押し上げ、私たちの家庭生活でも電気代や燃料費などで生活を圧迫しています。
記憶に新しいロシアと7ウクライナの戦争状態により、麺類やパンなどの主原料である小麦についても世界の生産量の25%を占める両国からの供給は物流インフラの被災等で見通しが立たちませんでした。その穴を埋めると期待された第2位のインドは、ジャコババードなどの穀倉地帯が熱波に襲われ、最高気温が49度に達するなど穀物生産に壊滅的な被害が出ました。インドの国内市場価格は既に8%も上昇し、インド政府は主食の価格を安定させ、国民の暴徒化を防ぐことを最優先せざるを得ない状況が続きました。
またマーガリンやアイスクリームに始まり、石鹸や口紅などの製造に欠かせない「パーム油」は、インドネシアとマレーシアからの輸入に全面的に頼ってきましたが、インドネシア政府は拡大する内需を優先し輸出を90%削減すると突然発表しました。このインパクトは不明ですが、パーム油は飲食業でも天ぷらやフライなどの揚げ油として多用され、またバイオ燃料として発電にも利用されており、各方面での深刻な影響は避けられないでしょう。
このように世界との相互依存や国際共存を前提としている日本は、世界の平和と安定が脅かされれば自分達にも大きな影響を受けることになります。「資金力で相手を従わせる」ような取引はもはや持続可能とは言えないのです。
●「サプライチェーン」から「バリューチェーン」への変容
それでは、極東の島国・日本は今後どのような取引関係を模索してゆくべきでしょうか?
一つには自給率の見直しです。お米の自給率100%を維持してきたのは、国民が消費カロリーの観点で飢えないための戦略ですが、同様にエネルギー自給率の向上は至上命題です。日本は石炭から石油へ、更には天然ガスや原子力にエネルギー源を多様化してきましたが、水力以外の殆どは原料を輸入に頼っている点で共通です。辺境の島国・日本は世界で最も再生エネルギーへの移行を急ぐべき国のひとつですが、その以降速度の遅さは致命的と言えます。
自然エネルギーの開発には、大きな設備投資は避けられませんが、年間20兆円にも及ぶ燃料の輸入を今後も継続し、海外市場に於いて炭素税を払わされることを考えれば、長期的視野で見た場合に自然エネルギーで自給率向上を急いだ方が、国益に適うのは疑う余地がありません。
企業はこれまで原材料を調達する場合、「経済合理性」を基準に、「供給の連鎖=サプライチェーン」を築いてきました。供給サイドに品質や安定供給を求めることはあっても、彼らの生活に配慮することは稀でした。ところがアフリカのコンゴ民主共和国で強制労働によって採掘されたタングステンやタンタルなどの希少鉱物が世界の注目を集め、ドット・フランク法という法律でそれらの「紛争鉱物」の使用が規制されると、家電メーカーや通信機器メーカーは原料確保の道を断たれたのです。また中国の綿花生産の9割近くを占める新疆ウィグル自治区での弾圧や人権無視が波紋を呼び、日本のファストファッション大手が世界各地で糾弾されたのは記憶に新しいと思います。
一つの製品が市場に出回るには、その原料や資材を供給する人、加工や生産する人、輸送や販売する人など多くの関係者がその商品の価値創造に関わっています。その中で誰かが犠牲になったり、不利益を強いられることは見逃せません。各自が生活の質を改善させ、将来にわたって価値を生み続けられるように配慮して取引するのが「価値の連鎖=バリューチェーン」です。需要増が見込まれれば収量改善に技術や投資で協力し、また気候変動の緩和策も求められます。
SDGsでは「誰も取り残さない」ことを説いています。日本ノハム協会も社会全体で害悪(harm)を無くす(no)よう皆で持続可能な社会を目指して協力し合いたいと願っています。ひとり一人の小さな行動次第で「きれいごと」は実現できるし、社会はもっと安定し平和で暮らしやすくなります。
世界はいま、持続可能な社会に向けて大きく変わろうとしています。私たちも正しい選択は何か、よく考えて行動しましょう。
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