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SDGs・サステナビリティ通信【SDGsウォッシュ】
いつも大変お世話になっております、日本ノハム協会の筒井です。今回も、SDGsやサステナビリティを巡る話題について、お話させて頂きます。今回は、「SDGsウォッシュ」について考えてゆきたいと思います。
言葉としては「SDGs」と「洗う」の組み合わせですが、言語明瞭・意味不明瞭ですよね。これは1970年代に世界中で環境汚染が問題となった頃、渦中の企業がメディアやNGOの非難をかわそうと行った、誇大広告や偽りのプロパガンダを「グリーン・ウォッシュ」と称したことが起源です。「ブラック企業が上辺だけ、緑のペンキで塗り繕った」という意味です。
この言葉には「環境に配慮しています」と言いながら、大したことはやっていない“誇大広告”と、実は口先だけとか、客観的な成果は無い、更には陰で環境破壊を放置している“嘘・偽り”に対する批判などの意味が込められています。これはブランドにとっては致命的なダメージを与えかねませんので、良い企業ほど、細心の注意を払っています。
もとより日本には、隠匿善事(善い行いを自ら口にするのは恥ずべき行為)という儒教的な道徳観もあり、寄付や慈善事業は表立って広報しないという自主規範も見られます。しかし、世界各地で暮らしてきた私としては、「赤い羽根募金」や、拉致被害者を救う目的の「ブルー・リボン」などのように、周囲の人々にも見える形で気付きを促し、賛同者を募って活動を拡げることは、SDGsの視点でも重要だと思います。SDGsウォッシュを恐れるあまり、コツコツと実行し、成果が出ているのに訴求しないというのは、とても勿体ないと思うのです。
それではSDGsウォッシュとの批判を招かないようにSDGsへの取り組みを紹介するにはどうしたら良いでしょうか? それは取り組み内容と規模、その表現の仕方について、第3者の意見を参考にすることだと思います。多くの企業のSDGsの取り組みを見ていれば、その充実度と対外アピールのバランスについて相対的にアドバイスができるからです。確たる評価基準はなく、社会通念上の助言なので100%リスクをゼロには出来ませんが、相当下げられることは確かです。
また信じて支援してきたNPOの活動が、目的合理性に適っているか、成果を生んでいるかどうかも、複数の目で見れば問い質すポイントが浮かび上がってきます。
先日、サステナブルブランド国際会議(2006年から世界各地でCSR部員や経営幹部が参加して行われる持続可能性と企業活動を話し合う会議)が横浜で開催されました。そこでもSDGsウォッシュについての議論がありました。
そこで気になった発言を2つほどご紹介し、ノハム協会の立場で検証してみたいと思います。
①「SDGsという言葉で全てが良いと思わせるメッセージは良くないし、結局はブランドを傷つける」
SDGsは世界共通の方向性(持続可能性)と行動すべき17の課題領域を示しているので、コミュニケーションに利用するのに大変便利です。SDGsの目標は包摂的で多くの課題を網羅していますが、あまり関連しないものまで、勝手にこじつけてしまうと違和感を感じる人が出てくるのは事実です。例えば絶滅危惧に瀕する生き物の保護は大切ですが、ペットなどの動物愛護とは異なります。ペット向けの傷病保険を開発目標15番に直接結び付けるのは少々無理があります。愛玩動物の飼育を通じて野生生物の保護に関心を持ち、支援に至るなどの関連性はあるので、否定するものではありませんが、訴求する際には表現に注意が必要です。
②「既存の事業からSDGsに当てはまるものを選び『やっていますよ』と発信することは最悪」
これには、私は異論があります。取り組み内容と表現のバランスはよく考える必要がありますが、上記の意見はSDGsの普及拡大を阻害しかねないと懸念します。日本は古来、社会善に寄与する経営理念を承継してきた老舗企業も多く、100年以上存続した企業は約33,000社と世界の41%を占め、200年以上の企業に至っては1,340社と世界の65%を占めています。それだけ社会からも、消費者からも必要とされてきた企業には、家訓や商習慣の中で、良かれと思って続けてきた行動規範が沢山含まれているのではないでしょうか?これをSDGsという新しい世界共通の尺度で評価すれば、該当するものが出てくるのは当然です。SDGsの理念に沿わないものを、無理やり沿っているかのように表現したり、針小棒大に表現するのは困りますが、兼ねてから取り組んで来られた努力をSDGsで再評価するのは間違っていないのです。
SDGsへの取り組みをどう表現すればよいかは、その基準が固まってゆく過渡期にあると言われています。リスクがあるからと避けるのではなく、どんな表現や、行動とのアンバランスがリスクを生むのかを学びつつ、持続可能な社会への行動は勇気を持ってアピールしてゆきましょう。自社の広報や宣伝に対して外部から非難されるのは、心臓が縮まる思いがするかもしれません。しかし皆様が正しいと信じてやってきたことには、ぜひ自信を持って語って頂きたいと思います。
電通では、SDGsウォッシュとの批判を招かないように、その心得を小冊子に纏めて無料公開しています。お時間のある方はこのURLリンクをクリックし、P13~17をご覧頂くと良いでしょう。
世界はこれからも、持続可能な社会を目指して大きく変わってゆきます。
遅れずについていくだけではなく、私たち自身で考えて、信念を持って行動してゆきましょう。
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