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SDGs・サステナビリティ通信【食とサステナビリティ】

いつも大変お世話になっております、日本ノハム協会の筒井です。

今回のテーマは「食とサステナビリティ」について色々な角度から考えてゆきたいと思います。人間、誰でも美味しいものを食べると、その瞬間は幸せな気分を味わえるのではないでしょうか?素晴らしい自然や芸術作品に遭遇し、立派なホテルに泊まれても、食事が美味しくなければ旅行の喜びも半減します。

その「食」が、実はいま危機に直面していることは、あまり理解されていないように思います。

●人口増と飽食の時代

第2次世界大戦が終わってから、世界の人口は25億人から79億人へと3倍以上に増えました。

少子高齢化に悩む日本では実感が湧かないと思いますが、アジア、アフリカ、中南米では国民の平均年齢も若いので、人口が増え続けているのです。そういう地域では食べることへの欲求を満たすのは大変です。

人口の増加に呼応するかのように、輸送や冷蔵保管などの技術が進んだ結果、戦後の肉や魚介類の消費量は何と5倍に増えています。海洋水産物でいえば、天然の魚は既に獲り過ぎて大きく数が減ってしまい、需要を満たすことは出来ません。いま私たちが食べている2億トンを超える魚の約半分は人口養殖によってつくられたものになっています。

●温暖化と食の危機

経済成長に連れて二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に排出してきた結果、年間平均15℃だった地球の気温は既に1度上昇し、各地で気象災害が甚大な被害を生んでいます。たった一度の上昇なのに、被害が激甚化するのは意外かもしれませんが、人間の体温で考えても7%上がれば39℃になりますので、地球がどれほど辛い状態かを察してあげないと悲鳴だけでは済まなくなります。

このままでは地球の平均気温が2~4℃上昇することが明らかとなり、何とかこれを1.5℃程度に抑え込もうと各国が危機感を共有し、規制を強化しています。もし仮に2℃上昇すれば、農業を陰で支えてきた蜂や蝶などの受粉介在生物の多くは絶滅し、世界の農業は壊滅的な打撃を受け、立ち直れなくなると予想されるのです。

●「食」の資源は管理して利用する時代へ

このままの資源の使い方や消費生活では、私たちの食生活は維持できなくなると科学が証明しています。困ったものです。私は食べることが何よりも好きなので、食べる楽しみを制限されるのは大変な苦痛です。

皆さんは如何でしょうか?

悲観していても仕方がないので、何とか解決策を見出し、一人一人が行動しなければなりません。世界の有識者たちと知恵を出し合って、人口に見合う食料供給量を確保し、公平に配分して行かなくては戦争すら起きてしまいます。

そこで議論されてきたのが以下のようなアイデアです。

皆さんにも是非ご自身の暮らしの中で少しずつ取り組んで頂きたいと思います

①旬の食材を地産地消

⁻ 季節に応じた「旬の食材」を中心に食べることで、二酸化炭素の排出を大幅に減らすことが出来ます。

⁻ 収穫された農作物や水揚げされた魚介類は、出来るだけ地元または近隣の消費地で食べるようにすれば、食品ロスを大きく減らすことが出来ます。美味しいものは人を惹きつけますので、都心からも人が集まってくるようになれば地方創生にも弾みがつきます。

②資源管理と持続可能な利用

⁻ 自然界で獲れるだけ取り尽くすのではなく、合理的な資源管理ルールに則って利用すれば、資源は使い続けることが出来ます。例えばマグロの幼魚は網目を大きくして獲らずに回遊させ、成魚になるまで待てば約17倍もの水揚量が確保できるそうです。

⁻ 大手スーパーに行くと、こうした持続可能な水産物のルールを守って獲られたことを証明する国際認証のマークがついた商品があります。MSCは天然の魚介類、ASCは養殖海産物の持続可能性を保障するマークです。皆さんも是非手に取って比べてみてください。

③バリューチェーンの見直しと食品ロスの削減

⁻ 世界には9億人もの人々が飢餓に瀕している一方で、先進国では大量の食料が捨てられています。世界で生産される食料は十分にあり、公平に分配すれば、誰も飢餓に喘ぐことは無いにもかかわらずです。

⁻ 日本でも年間600万トン以上の「食べられるもの」が捨てられています。材料の仕入れ過ぎ、料理の作り過ぎ、食べ残しなど、発生理由は様々ですが、少なくとも2030年までにはこれを半分にしたいものです。

⁻ 消費期限や賞味期限も安全と品質を優先するあまり、海外に比べると大変短く設定されています。賞味期限が近いものは小売店が納品を拒んだり、コンビニでは賞味期限当日に捨てられるお弁当が半分という異常な状況も見られます。これでは作る側も売る側も利益が出せず、疲弊しています。以前、フランスの残り物処分アプリをご紹介しましたが、無駄のない生産と消費には、企業と消費者の連携が不可欠です。

④食材の多様化とメニューの開発

⁻ 「放るもの=内臓など捨てるもの」を上手く調理して人気を博したホルモン料理や、タン(Tung=舌)、ソーセージ(腸管)なども工夫すれば美味しく食べられるものが沢山あります。漁業では混獲といって色々な魚種が網に掛かってきますが、雑魚として捨てられる魚や、家畜の飼料に加工されるものもあります。欧州では遺伝子組み換え作物などと区別する為、人間が食べても良い食材を網羅した「ノベルリスト」という表があります。そこには新たな蛋白源として2018年から昆虫が加えられました。クッキーやチーズに混ぜる試みが盛んで、最近では日本にも入荷しています。

⁻ 最近は「植物由来の肉」に熱い視線が集まっています。いわゆるべジ・ミートという大豆やインゲン豆などの野菜由来の造成肉です。大手ハンバーガーチェーンでも採用が相次ぎ、べジミート専用の店舗も出店が相次いで人気を集めています。私も時々食べますが、肉の代用物というよりも、新たな食材として味わえばとても美味しく感じます。

世界はいま、持続可能な社会に向けて大きく変わろうとしています。私たちも正しい選択は何か、よく考えて行動しましょう。

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