ラストワンスマイル

ラストワンスマイルとは、「最後の１マイル」という意味の英語表現です。物理的な距離を指すのではなく、主に通信業界や物流業界で「業者側の末端拠点から利用者にモノ・サービスを届けるための最後の区間」という意味で用いられることが多くあります。

ラストワンマイルは、元々通信業界で使われていた表現です。1990年代後半、インターネットが普及し高速の通信回線・通信方式が求められるようになると、通信業者の基地局と個々の利用者を結ぶ膨大な規模の通信回線をどのように構築、維持、拡大するかが課題となりました。この最後の区間を「ラストワンマイル」と呼び、基幹回線網と区別して議論されるようになりました。

近年では、オンラインショップの普及やライフスタイルの変化によって、物流における「ラストワンマイル」が注目を集めています。配送物の増加や不在・再配達の増加を受け、物流サービスの質と柔軟性に対する期待が高まる一方で、物流業者にとってはドライバー不足と労働環境の悪化が課題となっています。また、再配達の増加によって輸送によるCO2排出量の増加も問題視されています。

こういった課題は、物流拠点から利用者にモノを配送する最後の区間「ラストワンマイル」に集中して起きています。しかし、ロボットによる自動化と効率化が進んだ工場や物流倉庫に比べて、「ラストワンマイル」は自動運転や自動配達などの技術導入が難しく、依然として人的配達員への依存度が高いままです。日本では宅配ボックスの設置や、コンビニエンスストアの店舗受取サービスなどの取り組みが行われています。配達ドローンの実証実験も始まっており、今後の展開が期待されます。

欧米では、モノやサービスだけではなく、ヒトの移動の「ラストワンマイル」を埋めるサービスが続々と生まれています。都市交通の効率化、高齢者の移動、過疎地の移動手段の確保など、交通分野における課題解決が期待されています。